53.覚醒
わしじゃ、アルブレヒトじゃ。
わしも齢62を数え、長い人生を生きてきた。
長い人生じゃ、いつも順風満帆とはいかなかった、妻に先立たれ、部下に死なれ、国を追われ、その度に自暴自棄になりかかる。
しかし、何度もそんな気持ちを乗り越えてきた、諦め納得し、己を戒め、立ち直ってきたのじゃ。
だから、今回も乗り越えられる、諦められる、そう思っておった。
違ったんじゃ、死んでしまった者と、まだ生きている者たちでは。
死んでしまったから諦めたのと、生きているのに諦めたのでは違ったんじゃ。
このままでは、死ぬまで納得も諦めも出来ぬ、そしてわしは諦めたわしを許すことができぬ。
わしは、港街エグリスへ向かう道中にありがなら、
「すまぬ、わしは幻想郷に戻ってフィリスを連れ戻したい、しばらく待っていて貰えるか?」
と、言った。
クレイは、
「はい、お伴します」
と言い、皆も口々に
「何時言うかと思った」だの「気がつくのが遅い」だのと、ワイワイと言っておった。
やっと皆の顔に明るさが戻ってきた気がする。
事が決まればまずは180度方向転換して、シンシアの街に戻るのじゃ。
わしらは、シンシアの街に戻り、作戦を練ることにした。
まず、戦闘をしては全員で行こうと勝ち目はない、それに幼いミルドを巻き込むなんてもってのほか。
なので、幻想郷に行くのはわし一人じゃ。
帰りには追手がかかるやもしれぬし、荷馬車を借りて街道に待機しておく。
他にも、妖精の道出口にクレイとシシリーが待機。
行程は妖精の道から神様の神殿まで1.5日で往復3日+1日の予備日で4日待つ、帰ってこなければこの街に戻って検討。
と言う手順じゃ。
二日後の朝、わしはクレイ達と別れ妖精の道へ入って、神のいる神殿目指して歩き出したのじゃ。
ここからは、なるべく見つからぬ様に行かねばならぬ。
「お爺さん、まだ居たの?」
いきなり妖精のボレに見つかった、わしはあわてて
「ちよっと忘れ物をじゃな・・」
言い訳にもなっておらぬな。
「まぁいいけど、あんましこっち勝手に入っちゃダメだよ」
「そうじゃな、ところでフィリスの奴は元気にしておるかのぅ?」
「元気有るわけないじゃない、神様に暴言吐きまくって幽閉されちゃったのよ」
あのバカ者が、
「なに、その場所は?」
「なに? もしかして助けに来たとか?」
「・・・・」
「案内してあげようか?」
「いいのか! ・・しかし、おぬしらは神のウロコから作られておるし、筒抜けなんてことはないのかのぅ」
「ドナが拐われた時も分からなかったくらいよ、大丈夫」
わしは有能な案内を手に入れたぞぃ。
「そういえば、おぬしの仕事はよいのかのぅ」
「うーん、その事も問題で、ちょっとね・・・」
ドナは気まずそうに口ごもったのじゃった。




