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52.自失

わしじゃ、アルブレヒトじゃ。

神様のお墨付きを貰ったせいか、魔獣の幻獣も何も襲ってこぬ。

わしらは、順調に妖精の道に辿り着いたのじゃ。


「さようなら、気をつけて良い旅を」

と言う妖精ボレと別れて、わしらの世界"人間界"へと戻ってきた。

戻ってきても、相変わらず同じような森なんじゃが。

とりあえずは南に向かう、南に行けば少なくとも街道か海には出るはずじゃ。


半日歩いて、森を抜けると街道に出た、ここからは街道沿いに東に進む事にした。

更に半日を歩き、シンシリの街に出た。

その日は歩きづめで疲れておったので、宿に直行した。

翌日、ギルドに向かい地図を手に入れる。

ここはグレダゴラー山脈を抜けてエントの街から2つ先の街、南には行けば海があり、港町もあるが、水龍のテリトリーに近すぎる。

距離もあまり変わらないので、ひとつ先の港町エグリスを目指すことにしたのじゃ。

とはいえ、幻想郷でわしは鎧を壊してしもうたし、装備品の手入れをする暇も無かったので、この街で纏めて済ませることにした。

最近ミルドに、かまってもおらんかったしのぅ。

クレイは前回の事があってか装備にショートスピアをさらに買った、さらに折りたたみ式の弩弓もじゃ。

リーシャは特には新調せんかったが、矢を補充したりしておった。

ローラは自分も戦闘に役立てるようにと、弩弓と細身の剣を買って装備しておった。

わしの鎧直しには、3日ほど掛かるのでその間クレイとリーシャとシシリーとローラはギルドでクエストを受けてこなしておった。


わしはミルドを連れて公園に来たり、劇を見に行ったり、焼き菓子を食べに行ったりしておった。

わしは刀の修行がしたい、それだけだったのに、なんでこんな事に・・・

「お爺ちゃん、お爺ちゃん」

呼ばれて気がつく、

「食べ終わったから遊んできていい?」

わしは、公園に駆けて行くミルドを見ながら、顔をピシャンと叩いて気持ちを切り替えるのじゃった。


三日後、鎧の手直しが終わって、わしらは港町エグリスへ向かう。

徒歩2日、南東に向かって街道を進んでいく。

すると、初日の夕刻に盗賊に会ってしもうた。

少人数の追い剥ぎで、わしらからしたら、どうという相手ではなかった。

皆武器を構え、ミルドとシシリーを守りつつ、警戒する。

わしは武器を構えもせんじゃった、すると盗賊の一人が無造作に近寄って、

「おい爺、生きてるか?

生きてるならサッサと金目の物置いて行けつってんだよ!」

剣ををつきつけるように手を伸ばす。

わしは、左手で鞘を抑え、右手で刀を抜き、その盗賊の剣を持つ手首を切り落とし、刀に付いた血を振り払うまでを一息で済ませた。

「ひいぃ、うぇいぃー」

盗賊は切られた手と刀を拾って、奇声を上げながら逃げていく、他の盗賊もそれに習って逃げていった。

振り返ると、ミルドが泣いておった。


わしの姿を恐れて、泣いておった。

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