50.幻想種
わしじゃ、アルブレヒトじゃ。
わしらは、妖精のドナを神様の元へ送り届けるため、エルフの先導でひたすら進み続けるのじゃった。
もう5日も歩き通しである、あと一日ほどで付くらしいのじゃが、最後の1日はずっと上り坂なのじゃった。
その5日間にしても、深い谷があり、食虫植物の群生地帯があり、膝まで埋まる湿地ありと、困難を極めた。
なぜ、エルフの中でも屈強な二人が案内人に選ばれたのか、わしらを警戒してではなく、ただ単に行程が厳しいからだったのかもしれぬ。
そう思えるほどの、困難な行程であった。
皆疲れておる、今日は早めにキャンプして、3交代でしっかり休憩するのじゃった。
わしは、見張り番の時に、エルフに他の人間の事を聞いてみたのじゃ。
神様はドナが拐われたと聞いて大層お怒りになった、エルフは、ほうぼう手分けして探したが見つからず、せめて怒りを鎮めようと人間を滅ぼすつもりであった。
しかし、神様が許さなかった、それをすれば帰ってきたドナが罪に苛まれると。
だから今でも人間は幻想郷に生きている、しかし逃げ隠れてしまった、何処に居るかは分からないし知りたくもない。
と、言うことじゃった。
この世界の人間は、自分たちは外の世界の人間とは無関係、と逃げたのじゃろう。
翌朝、皆疲労の色隠せないが、装備を整え気合を入れる、この地に来て最初に丘を登った時見た、雪を被った山が今は目の前にあった。
森の中を進み、延々と上り続ける、そしてとうとう辿り着いた。
苔生した石柱が立ち並び、何本かは折れて崩れておる。
更に進むと石造りの神殿、扉は今はなく、大きく開け放たれておる。
そこかしこに妖精が飛び回り、ドナの姿を認めると、小さく手を降ったり仲間を呼んだりして、遠巻きに見ておる。
わしらは、促されるまま神殿に入っていく、そこに見た神様の姿とは古代龍、エンシェントドラゴンであったのじゃ。
体の全体は見えぬが、おそらくは30-40m、見えておらぬだけでもっと大きいかもしれぬ。
グリフォン一匹よりも大きな頭をしており、口元から見える牙は一つ一つがブロードソードほどの大きさが在る、そしてそれが無数に並んでおる。
黒曜石のような艶の在るウロコが、体全体を覆い、目玉は体の割に小さいにも関わらず、人の頭ほどありそうじゃ。
頭から体にかけ体の中心にそって角のようなトゲが並び、それはおそらく尻尾まで続いているじゃろう。
羽は畳んてもなお存在感があり、船の帆のようじゃ。
吐く息は熱風で、離れておっても肌に当たるとチリチリと痛む。
直接は会話はせず頭に直接語りかけてくるので、わしらは慣れるのにしばらく時間がかかった。
わしらは、ドラゴンにお辞儀する、
「この世界の神よ、迷える妖精ドナをお連れしました。しかし、元は私共の同族が拐かし連れ去ったとの事、深くお詫び申し上げる」
「よい、そなた達に責任のない事は承知しておる、ドナも無事に戻った事で水に流そう。」
ドラゴンは謝罪を受け入れた。
「ドナよ、これに懲りたら今後は深く注意して人と接しよ。無事で喜ばしいぞ、帰るのに苦労をしたであろう。」
ドナを労った後、
「ドナを送ってきた礼として、幻想郷を通過することを許そう」
そして、更に続けて言う
「ただし、そこのペガサスはここに置いて行ってもらう。」
「なっ」
わしは何故と問うつもりじゃったが、それより早く
「そのものは幻想郷の住人、外の世界に出ることが同義に反しておる。そなたたちの世界にはペガサスもグリフォンも、もう居まい」
わしは納得行かず
「ドラゴンはいますぞ」
「ドラゴンは世界が裂かれる以前から、その世界に居たものだ。もともと居たものに出て行けとは言えぬ。しかしペガサスは、ここで生まれここで育つための種である、そちらの世界に行くこと看過できぬ」
わしは、何かを話さねばと思っておった。
そのとき、フィリスが口を挟んだ。
「アル様、私ここに残ります。」




