39.罠
わしじゃ、アルブレヒトじゃ。
手品ショーの最終日、舞台で始めの挨拶をしておった、座長のローラさんが狙撃され、胸に矢を受けたのじゃ。
ローラさんはしばし固まったあと、自分の胸を見て、糸の切れた操り人形の様に崩れ落ちたのじゃ。
わしは、舞台に椅子を持って駆け上がり、それを盾にして狙撃者を探しておった。
観客は悲鳴を上げ、パニックになりつつ逃げ惑う、今じっとこっちを見るような者はおらず、パニックに乗じて逃げておるのじゃろう。
クレイは盾をもってこれ以上の狙撃を阻止しようと、舞台の袖から飛び出して来ておる。
シシリーが慌てて回復魔法を唱えようと掛けより、他の団員達も集まってくる。
まずは毒が塗ってあると思われるので、先にキュア・ポイズンで毒の回りを抑えてから治癒魔法に切り替える。
応急の治癒が済んでから、担架に乗せ教会に急いで連れて行ったのじゃ。
その間ももちろん、わしとクレイで暗殺者の警戒はしながらじゃ。
すぐ近くにヒーラーがいて、初期治療が良かったこともあって、ローラさんは命を取り留めた、しかし重症で動けない事には変わりない。
問題はなぜ、こんな暗殺が行なわれたか、と言うことじゃ。
わしはその暗殺者を捕えようと思う、と皆に話をした、皆賛成じゃった。
ローラさんの好意で、貴重な体験もさせてもらったし、一緒に何日がおって皆が彼女を好きになっておった、彼女が人から恨みを買い、なおかつ殺されるほど恨まれるとは、とても思えんからじゃ。
暗殺者が何人かは解らぬが、同時に2本撃ては成功率が上がるのに、遠くから1本だけと言うのは、よほど腕に自信があるか、単独なのであろう。
怪我は大した事はなく、午後の部のマジックを予定通りやると張り紙を出し、その成否を確かめに来たところを捕らえる作戦じゃ。
場合によっては、再襲撃の可能性もあるので、十分注意する必要がある。
その危険なローラさんの身代わりはリーシャが務めることになった。
ローラさんよりかなりスレンダーなリーシャは、防具を付けたまま変装できるからじゃ。
特に胸はブレストプレートをして特に守る、あとシシリーは回復のため舞台袖に待機じゃ。
観客席はわしとクレイ、更に舞台を見渡せる建物の上からの見張りがフィリス、ミルドはこの教会に残ってローラさんの護衛じゃ。
まぁ、本当の護衛は教会の神官戦士たちがしてくれるのじゃが。
わしらはサーカスの座長にも話を通し、午後の部の作戦を開始するのじゃった。
悟られぬように、武器を目立たぬようカモフラージュして客席に潜み、怪しい人物は居ないか辺りを伺っておった。
マジックショー午後の部の幕が上がり、座長に変装したリーシャが舞台に上がる、わしは刀の柄に手を当て回りを見渡すが、それらしい者は見付からぬ。
このままでは、リーシャが撃たれてしまうやも知れぬと焦っておった。
「がっしゃーーん」
と、舞台から離れた屋台が音を立てて倒壊する、そして
「アル様ー捕まえましたよー」
フィリスの声じゃった、わしらが到着するとグチャグチャに潰れたの屋台の上に、フィリスと首根っこを抑えつけられた、地味な格好の男がおった。
近くには弩弓と矢も散らばっておる。
奴は舞台が見える建物の、二階から狙っておった、見つけたフィリスは部屋に突入し、そのまま窓を突き破って落下、屋台の上に着地したそうじゃ。
此奴を憲兵に引き渡す?、とんでもない。
わしらは屋台を弁償して、此奴を一座の倉庫まで連行するのじゃ。
聞きたいことは山程あるでな。
そう、教会にミルドを預けてきたのは、このためなのじゃ。




