38.舞台
わしじゃ、アルブレヒトじゃ。
荷受人の陽気でサバサバした女性は、ローラさんと言うて、手品師一座の座長さんじゃった。
彼女の誘いをうけ、手品の手伝いをする事となったのじゃが、本番の王国誕生祭の前夜祭まであと2日、それぞれ一つの手品の特訓に精を出すのじゃった。
シーフで体も柔らかいリーシャは、例のチェストボックスを3っつ使った人体切断マジック、実は1箱に一人ずつ入っておるので、そのうちの一人じゃな。
フィリスは包帯ぐるぐる巻きにされ棺桶に入れられ、その棺桶から脱出するマジックの手伝い、これも実はグルグル巻きにされる人と出てくる人間が別。
シシリーは、バニーガールの格好でアシスタント。
そして、ミルドは大きな箱に入った大人が箱を縮めると、子供になるマジックの子供の方。
クレイは手品に欠かせない、クライマックスにドラムでダラララララララ・・ジャンて奴を叩く係。
わしに至っては、出来る事が無かった・・・・
まぁ出演しておっては見ることが出来ぬし、一人くらいは観客のほうがいいんじゃ。
わしらは、練習してリハーサルして・・・倉庫の隅で寝て、起きたらすぐ練習そしてリハーサル・・・
その間も座長のローラさんは、舞台の設営やら、祭りの話し合いなんかに出かけて、帰ったらリハーサル、目の回る忙しさをこなしておった。
結局、手品の出来栄えにOKが貰えたのは、前夜祭前日の夜じゃった。
明日からは、前夜祭・本祭3日間・後夜祭の5日間の祭り開催中のうち、後夜祭を除く4日間の公演の開始じゃ。
舞台は、マジック、サーカス、日替わりのイベント、マジック、サーカスの順番でマジックは一日2回公演。
当日朝、シシリーとミルドは舞台化粧をしてから、見つからぬよう舞台袖から観客席をチラチラと見ておった。
わしはそんな様子を観客席から見ておる。
まだ始まる時間まで間があり、人も疎らなうちに、孫娘の晴れ舞台を間近で見ようと、最前列キープしておるのじゃ。
しばらくするとお客が入り始める、化粧で表情までは見えぬが、シシリーとミルドは顔を青くしておるんじゃろうな。
リーシャも何処かから見ておるんじゃろうが、シーフスキル駆使して、隠れておる彼女を見つけることは、わしには無理じゃ。
そうこうしておると、ローラさんが舞台中央で挨拶と前口上をはじめる・・・
はじめはジャグリングや一人でするマジックから入り、人体消失や人体切断、人を若返らせたり年老させたり、そんな演目が繰り広げられておった。
シシリーはアシスタントとして、リーシャは人体切断マジックの顔が見えなかったから、胴体か足やっておったんじゃろうな、ミルドは若返って子供になった女の子じゃ。
そうしてマジックショーは大盛況のなか幕を閉じたのじゃ。
演目が終わって裏手に回ると、
「緊張したよー、凄い人がいっぱい居て頭がクラクラしたよー」
とミルドが言いながら駆け寄ってきた、
「午後の公演まで間が有りますから、それまでならお祭りに言って楽しんできてもらって構いませんよ」
と、座長のローラさんから言ってもらい、わしらも露天を回ったり見物をして回って楽しんだんじゃ。
そして、午後の公演、化粧を直して舞台に上がる。
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そんな生活が幾日か過ぎて、もう王国誕生祭本祭の最終日、つまりは公演の最終日となったのじゃ。
初日は皆ガッチガチに緊張しておったが、2回めからは段々と慣れて手際も良くなり、観客席を見る余裕が出来たのか、ミルドはわしに手を振る余裕さえ見せておった。
今日もわしは最前列を確保しようと、演目が始まる遥か前に会場に入っておった。
日を追うごとに公演の人気が高まり、シシリーに至っては固定客まで付いておるほどじゃ。
最終日ということで何か感慨深いものがある、いつもと同じような手順で幕が上がり、座長のローラさんが出てきて、挨拶をしておった、そのときじゃ。
ボッと言う音を立てて一本の矢が客席の上を通り過ぎ、ローラさんの胸を貫いたのじゃった。




