37.チェストボックス
わしじゃ、アルブレヒトじゃ。
工業都市リューナイを出発して、3日目の昼前に王都ウルに到着したのじゃった。
王都と言う通り、ウルはこの国モーリスの王都であり、沢山の人が行き来し賑わう街じゃ。
わしらは西側の門をくぐり、街に入ろうとしておった。
人が多いはずで、衛兵の言うにはもうすぐ王国誕生祭があるらしい。
見れば道の脇に置いてある芝居小屋のセットや、サーカスのテント、リハーサルする管弦楽団、露天を制作する人、などなど色んな人が忙しなく動きまわり、祭りの準備に追われておる。
そのための警戒をしておる衛兵達も沢山おった。
わしらも、祭りで少し遊ぶのもいいかもしれんな、など思うておった。
衛兵が、わしらの積み荷を確認すると言うので、ギルドの依頼書を探して懐を探っておると、フィリスが箱をパカっと開けたのじゃ。
中は空じゃった、
「は??」
停止する思考、そこから急速に頭の中が回り出す、何時から? 盗難? イヤ見張りはしておったし、不味い、非常に不味い、ギルドに払った保証金が帰ってこなくなるもの不味いし、ギルドからの信用を落とすのも不味い。
衛兵も、頭を抱えておるわしらを見て、気の毒そうな顔をしておる。
とりあえず中身を探さねば、それ以前に何が入っておったんじゃ? 服か? いや壊れやすいと言っておった、時計の様な機械か? それともガラス製品か? 解らないでは探せない。
ギルドの受注書を見つけ内容を確認、{チェストボックス3っつ}、その中身には言及しておらぬ。
そもそも、鍵が掛かっていたはず、と箱を見たら箱の鍵の部分の金具がヘシ曲がっておる、いや伸びきっておるのか。
「フィーリース、この馬鹿馬、いや馬鹿力馬ー!」
「ひぃ」
「お前の力ありすぎるんじゃから自覚せんかっ!」
詰んだ・・荷受主に事情を話すしか無いのぅ、届け先住所を衛兵に聞いて、重い足取りで向かうのじゃった。
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荷受主の倉庫に向かい、事情を説明すると、荷受人は陽気でサバサバした女性で、
「あっはっはっは、それはちょっと災難でしたね」
と他人事の様に笑って説明してくれた、
「もともとチェストには何も入ってなくてね、このチェスト自体が荷物だったってわけですよ。」
「???」
わしらは理解できずにいると、
「私たちは手品師でして、そしてこのチェストは特別製なんです、実はマジックに使う特別なチェストでしてね」
「あー、なるほど壊れやすいと言ったのも、普通のチェストとして扱うと壊れてしまうから、と言う意味で言っておったのか」
「まぁ、壊れてしまっているようですが」
「誠に遺憾ながら、申し訳ない」
「大丈夫、このくらいなら普通のチェストとの金具と付け替えれば問題無いでしょう、それよりちょっと今人手が足りなくてね、ちょっと手伝って貰いたいんだ、金具の件はそれで帳消しって事でどうでしょう」
「解りました、こやつを存分にお使い下さい」
と、フィリスを渡してギルドの受註書にサインをもらうのじゃった。
結局、わしがギルドに書類を持って行っておる間、ほかの者達は手品師一座の手伝いをしておった。
倉庫に戻ってくると、手品のリハーサルをやったり、舞台の道具を荷馬車に積んだりしておった。
「お爺ちゃん、あれっ!あれっ!」
もうミルドがテンションマックスで、わしに手品を見せようとグイグイ引っ張ってくる。
そんなわしに、さっきの陽気な女性が近寄ってきて、
「いやぁ、反応が初々しく可愛いので、ついついサービスしちゃう、どうです?、今回のお祭りで、マジックの舞台を出すのですが、ちょっとやってみませんか?」
わしは少し考えて
「ぜひとも、手伝わせて下さい」
と答えた、わしはともかく、ミルドにそんな楽しい思い出ができたら、さぞかし良いじゃろうなと思ったのじゃ。




