35.変人
わしじゃ、アルブレヒトじゃ。
海賊船を拿捕して、予定より時間は掛かったが、何とか港まで戻ってきた。
街の守備隊に、海賊を丸々引き渡し、わしらは領主の館へ帰ってきた。
すると、庭に何やら変なものが出来ておる。
ゴミを燃やす円柱状の焼却炉が、上下に2つくっつけられておる様な形じゃ。
下の焼却炉は普通なのじゃが、上の焼却炉は下のものより高さは同じじゃが、幅が大きくその端から4本の足が伸びて、下の焼却炉をまたぐように立っておる。
「なんじゃい、これは?」
わしが呟くのを、待っていた様なタイミングで、賢者マルセルが説明しだす、
「これは爆炎サイクロン式排煙軽減装置の実験炉です」
わしは
「なんじゃい、おったのかビックリしたのぅ」
と、行って後ろを振り向く。
すると後ろには、賢者マルセルと魔法使いメルド導師が、肩を組んで立っておった。
「みなさんがクルージングで遊んでいる間、わたしたちで作り上げたのです、これから実験をしますので、ぜひ見ていって下さい。」
と、マルセルが言う。
まったく、遊んで帰ってくるだけであったら、どんなに良かったか・・・
・・・・・・
・・・・
・・
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しばらく、色々と遭ったことを説明したのじゃ。
すると、
「そうですか、大変でしたね、では実験を開始しましょう!」
大変でしたねの一言で片付けられてしもうた、しかも予定通り実験するらしい。
珍しくハイテンションな賢者どのに、圧倒されっぱなしじゃ。
「そういえば、皆さんも呼びますか?」
などと言うから、わしは
「皆疲れとるから、部屋で休ませておくのじゃ」
と、言っておく。
賢者マルセルが合図をすると、メイドが下の焼却炉にタイマツを投げ入れ、暫く待つ。
当然中の物が燃えて煙が出てくる、実験で見やすくするためか、ピンクの煙が出てきておるがのぅ。
やおら、賢者マルセルと魔法使いのメルドがそれぞれに魔法を唱え始める、魔法が完成したのか、二人が杖を突き出したポーズで、ブルブルと小刻みに震えながら、じっと装置を見つめておる。
すると煙が止まり、しばらくして二人が集中を解くとまた煙が出だすようになった。
「どうですか!」
興奮気味に二人は聞いてくるのじゃが、
わしの感想は・・・
「なにが???」
うなだれる二人から説明を受けるに、これは下の炉を魔法剣を作る時の窯に見立てて、立ち上る煙を上の炉で受け取り、爆炎魔法とトルネードの魔法を調整した合体魔法で燃やし尽くす、公害対策装置なのだそうじゃ。
たとえ人里離れた所に移転させても、煙による拡散はある、そこでそれを軽減する装置を、研究しておったのだそうじゃ。
今はまだ高位の魔法術者二人が要るが、いずれは一人、そして最終的には無人で、その実験じゃったそうな。
その研究を今からレポートにするから、工業都市リューナイに持って行って欲しい、との依頼を受けたのじゃ。
研究者とは変わり者じゃが、優しい連中じゃのぅ。
「とりあえず、少し眠らせて欲しい」
と言って爆睡する二人を見ながら、そう思うのじゃ。
誤字脱字、など有りましたら、ご一報頂けると幸いです。
ここまで読んでいただき、有難うございます。




