33.海賊船
わしじゃ、アルブレヒトじゃ。
わしらは、セレブにクルージングを楽しんでおっただけだというのに、海賊に襲われてしもうた。
わしは、船長の元に駆けつけ、戦況の確認をしておる。
今回は、長距離航海ではないため、この船の乗組員の定員50名に対して、現在は船員35名で航行しており、操船に必要な人間や、非戦闘員を除くと15名ほどしか戦闘出来ない、とのことじゃ。
わしらも、普段使っている装備は持ってきておらぬ、武器はともかく鎧が無いのは恐ろしいのじゃ。
クレイとフィリスは大振りの斧を、リーシャは弓を、シシリーは棍棒で武装する。
ミルドとセシルは、非戦闘員と共に船倉に避難させておく。
わしは、船員が使う予備のカットラスとダガーを借りて、海賊船が見える所へ来たのじゃ。
相手はガレー船じゃった、ガレー船と言うのは、漕ぎ手が櫂で漕いで進む船じゃ、櫂の数からおよそ漕ぎ手50人程度、こちらよりかなり喫水線が低く船内は丸見えではあったが、置盾を置いて弓から防衛しておるので、正確な人数は解らぬ、船首には巨大な衝角(体当たりして船体に穴を開けて攻撃する武器)も付いておる。
対してこちらは、艦首と艦尾に巨大なバリスタ(据え置き型のクロスボウ)を備えておる。
こちらのキャラック船は風を掴めばスピードで勝るが、ガレー船は風向きに影響されず小回りが利き、しかも瞬発力で勝るらしい。
まっすぐ逃げては衝角の餌食になるため、船長は巧みに操船しておるが、それでもこのままでは追いつかれそうじゃ。
こちらは、バリスタや弓をうち、敵の漕ぎ手を少しでも減らそうとするが、倒しても倒しても、盾の後ろから代わりの漕ぎ手が出てきて、敵は速度を維持しておる。
喫水線の高い、こっちの方は高い位置から撃て、しかも追われておったので射程も伸びて、一方的に攻撃しておったのじゃが、そうこうしておるうちに敵の弓も届き出す。
しかも射手の数は向こうのほうが多いと見える。
こうなると、おちおち顔も出せなくなってくる。
とうとう敵船は間近までせまり、衝角による体当たりを仕掛けてくるが、これは躱す、船長の素晴らしい操船のおかげじゃ。
躱すのに旋回した分船足が鈍り、横に並ばれる。
次々と鉤爪の付いたロープが投げ入れられ、ロープを括りつけた矢がクロスボウで船体に打ち込まれる。
クレイは甲板を走り回りロープを斧で叩き切り、リーシャは弓で、ロープをたぐり寄せる海賊や、クロスボウを持った海賊を優先的に狙い撃つのじゃった。
しかし、こうなってしまえば接舷されるのは時間の問題じゃった。
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しばらく頑張っておったが、とうとう接舷されてしもうた。
わしらの乗る船の右舷と、敵船の船首は多数のロープで固定され、縄梯子まで掛けておる。
それを伝って海賊どもは、こちらの高い甲板へ乗り込んで来ようとしておった。
海賊が、喫水線の高い船によじ登ってくるのに、苦戦しておるのがせめてもの救いじゃ。
一気に押し寄せては来なかったが、それでも矢傷を受けたり切り結んだりで、こちらも被害が大きくなってくる。
シシリーは次から次へと傷ついた船員を治療し、顔に疲労の色が濃く見える。
まだ乗り込まれてはおらぬが、このままでは押し切られてしまう、わしは船の淵で戦っておるフィリスを呼びつけたのじゃ。
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