32.クルーズ
わしじゃ、アルブレヒトじゃ。
港町アザレンに戻ってきて、今回の顛末を賢者マルセルに報告したら、シッカリ怒られたわい。
まぁ、他国に内情に干渉し、立て篭もって魔力炉を殴りつけ恐喝したのじゃ。
最後の結果以外は、かなり悪い事しておったから仕方ないのぅ。
一緒に隣におるメルド導師も叱られておる。
弟子とは言え少女の体を奪って、さらにこれまた他国の財産を破壊しに行くと言う、完全テロリストのような事企んでおったんじゃからのぅ。
賢者マルセルの怒り方は、悪ガキを怒る父親の如く怒鳴るでなく、また母親のようにヒステリックになるでなく、まるで寺で切々と説法を説く和尚のように、もっと言えば一定のリズムを刻み続けるメトロノームの様に、冷静に正確に公正に反論の余地無く叱られた。
こんな時パーティーメンバーは我関せずと、目線を合わせようともしない、普段空気読めない馬娘フィリスすら無関係を装っておる。
一番ガンガン魔力炉殴りつけておったくせに・・・
そして、その説教タイムが終わると、今度はそれ以上に感謝された、不治喘息の蔓延を止めるキッカケを作ってくれたと、セシルを助け更には魔力炉も壊さず良く無事で帰ってきたとな。
そして、急ぎでないならしばらくはここに滞在して欲しい、と言われたのじゃ。
そこでじゃ、折角の港町なので、本日は船を一艘借りてのクルージングツアー、と言うわけじゃ。
水龍のせいで、大陸を行き来するような船が湾を出られず、海運会社が非常に厳しい状態なのじゃ。
そんな海運会社が潰れないように、偶にこういった催しをして、お金を落としてやる目的もあるらしい。
それで、賢者マルセルに勧められたんじゃ。
もちろん、お金を出すのは領主様じゃ、わしらは精一杯、遊びつくすのじゃ。
30~40mほどの船体に、3本のマストは風の力を受け人に力を使わず進む、しかも風さえ吹いておれば、どちらの方向にも進める、と言う最新型のキャラック船なのじゃった。
船長は、この船の力があればジパングはおろか、世界一周すらして見せると豪語しておった、ジパングの位置は知らなかったがのぅ。
こんな上等な船が、湾に閉じ込められ外洋に出られぬとは、勿体無いものじゃ。
わしは、上等の酒のグラスを片手に
「クレーイ、リィーシャー楽しんでおるかー」
と叫ぶように呼んでみると、奴らは船の淵で青い顔して交互に吐いておる、初めての船だし、船酔いらしいのぅ可哀想に。
シシリーはブツブツとお祈りをしてたまに自分の胸に手ておる?、ああぁ、あれは癒やしの神聖魔法で、船酔い直し続けておるのか。
あれ、帰るまで精神力持つかのぅ。
ミルドはセシルと元気に遊び回っておる、少しもじっとせず、かくれんぼしたり鬼ごっこしたり、いい友達が出来てよかったのぅミルドや。
ただ、他のゲストや船員に迷惑が掛からんうちに注意しておくかのぅ。
そして、なぜかその二人に混じって遊んでおるフィリス、おまえ二十歳じゃろうに・・・まぁ馬じゃし精神年齢は同じくらいなのかもしれんの。
魔女メルドは賢者マルセルと何やら研究しておるようで、今回はきておらぬ。
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早朝に出港した時には、水平線の辺りにあった太陽も、今では真上から照りつけておる。
皆は、釣りをしたり、日光浴をしたり、クジラを見たり、また遊んでおったり、まだ船酔いしておったり、それぞれ楽しんでおった。
ゆったりとした時間が流れておった。
船員が、島影から現れる海賊船を見つけ、騒ぎ出すまでは・・・
今回のお話書く準備として、中世の船とか調べてたら夜が明けてました。
ネットって時間の感覚無くなりますねぇ。
誤字脱字などございましたら、お知らせ下さると助かります。
ここまで読んで頂きありがとうございます。




