5話 理由
読み終わったあと、あり得ないと、思うかも知れませんが、
5話 理由 お読みいただければと思います。
注:『赤壁』は、前回と、同じです。
『精神』と、最後にでてきますが、
『こころ』と、お読みください。
長く退屈な終業式を終え、教室にて担任による
夏休みの注意を聞き、テストと通知表を受けとる。
周りを見てみれば、喜ぶ者、そして、赤壁の戦いで敗れる者さまざまだ。
そして、私は一番気になっている少年に目をやる。
……凜くんは、どうだったのかな?
凜くんは成績表やテストの結果に興味無さげに鞄に仕舞うと、さっさと帰り支度をする。
……補習とかじゃないよね?
「あ~あ~この娘はぁ、そんな切な気にアイツのこと見つめて」
「明日菜このあと少し付き合って」
「え? う、うん、別にいい……けど?」
何故か双葉が獲物を狙う様に凜を見ていた。
部屋を重い沈黙が支配する。
明日菜は何故こうなったのだろうと思う。
帰ろうとしていた凜くんを双葉と琴羽が捕まえて、何故この二人が凜くんを捕まえたのか理解して、観念したように本当に小さく笑う。
「腹が減ってはなんとやら」
凜くんがそう言って、ハンバーガーショップで人数分のハンバーガーを買うと琴羽の案内で琴羽の家に着き、今は琴羽の部屋にいる。
そして、現在――
凜くんの買ったハンバーガーセットをみんなで食べている。
はぁ……と、凜が溜め息を吐く。
「まあ、二人ならこの状況も、さもありなん……か」
諦めた様に言って少しずつ話していく。
「俺にはさ、スッゲー仲良くしてた奴がいて、たぶん、こいつとは、ずっと仲良くいられたら最高だって思える奴が居たんだけどな」
「それって、女子だったり?」
と、双葉が聞く。
「ちょっと、双葉」
明日菜がたしなめる。
「あぁ、あいつ……、咲空は幼馴染みの女の子だった」
そう、懐かしそうに笑う。
「ごめん、凜くん」
「続き。聞いていい?」
琴羽が確認する。
「あぁ……、グループ内の、ほんの些細な事だった。些細なミスだった。最初はグループ内で、その事を"いじり"だした。それが"おもしろい"と、周りも誇張して広がっていったんだ……」
その言葉に明日菜たちは眉をひそめる。
「それって、苛めでしょっ!!」
あぁ、と、凜くんは話を続ける。
「周りも面白くしてやってる、笑ってるから弄っても大丈夫だと、皆、笑ってたな……」
「凜くんは……」
明日菜が不安気に聞く。
「俺、そう言うの面白く感じる感性もちあわせてないよ。で、『笑えないし、何が面白いか説明しろっ! 下らないことしてんなよっ!!』て、キレた」
それで、と話の続きをさとす。
「今度は俺も標的になって、『好きなんだろ』とか、ガキっぽいこと言ってたけどな。……咲空は、『ごめん、わたしの所為だね』とか『わたしは、へーきだから』って、笑ってたけど、そんな訳ねーじゃん」
そう言って当時を思いだし、静かに怒りを覗かせる。
「それで、その……咲空さんは?」
凜は顔を歪ませて。
「『そんなのに、負けない』って言ってたけど、咲空は自分を庇ったせいで俺まで標的になったって謝ってた。それから、学校を休む様になって、プリントとか持って行ったり、休みの日とか外に出かけたりしてたんだけどな……」
そうして薄く自分を嗤う。
その笑みがあまりにも切なくて、痛くて、わたしは……
……もう…………いいよ。
と、言って、抱きとめ、その哀しみを受けとめ、癒してあげたいと思った。
「その時にクラスのバカ達に見られて、心無い酷い言葉で傷つけられて、家にもいずらそうで、それから…………少して、命を絶とうとしたんだ……」
命を絶とうとした―― その言葉に私たちは息を飲む。
「助かったんだけど、未だに意識が戻らないままだ。俺宛に、一冊のノートが送られて来て、本当は辛い事、悲しい事、悔しくて心が痛くて張り裂けそうだと、悔しくて震えた筆跡に、堪えても零れ落ちた涙で文字が滲んでた」
と、凜くんは話を締めくくった。
私たちは、ただ、「ごめん」と、謝るしかなかった。
「それで……凜くんは咲空さんの事……」
「好き……だったんだと、後になって気付かされたけど、遅すぎた」
私は、遠慮がちに尋ねる。
「お見舞いとか……は?」
「行ってたんだけどな、此方にきてからも。……けど、止められたんだ」
「どうして?」
凜くんが一瞬困った様に。
「ずっと一緒だった俺はこの通りだけど咲空の時間は、12歳で、止まったままだ……。それが残酷で辛いって……。だから今は受け付けに咲空の好きな色の花を預けてる」
花には罪がないからさ、花だけは受け取ってくれてるみたいだと最後にそう言って話終えた。
……私は、自分のことしか、これからどう頑張ればいいのかと言うことしか考えてなかった。
私がそう思っていると、凜が立ち上がり、
「じゃあ、話すことは話し終わったから」
と、帰ろうとしていた。
私はとっさに凜くんの腕を抱き留めた。
琴羽と、双葉が驚き、勢い余った私を凜くんは驚きつつも受けとめた。
抱き留めた私自身、狼狽している。
けれど私は直感で動いていた。
……このまま、別れたら、なにもかも駄目になる!!
琴羽と双葉は、きっと私が辛い選択と決意をしたと顔を見合せ、私達が側にいて支えてやればいいか、と頷き合っている。
友達ってありがたい。
――好きになってもらえないのは辛いけど、男女の友情は無いってきくけど、それだけで凜くんを好きになった訳じゃない……。
その精神の在り方が素敵だから好きになった。
自分も考えさせられ、良い方に変わっていける、変えていける。そんな関係を彼氏、彼女になれなかったそれだけで終わらせたくない――
今回も、お付き合いいただきありがとうございました。
その人が、その人だから好きと言う気持ちや、尊敬をすると言う ことは、男女の関係になれなかったら、友情もあり得ない、
そんなことで、消えてしまうのでしょうか?
男女の関係に〜と言うのは、もともと、ひどく浅く安っぽい関係に、私には、思えてしまうので、このような話にしました。
それでは、今回はこの辺で、さようなら。