表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cool breeze  作者: 白花
1章 出逢い
6/13

4話 好きと言う気持ち

 告白から翌日――

 私は心も足どりも重く溜め息を吐く。


「はぁ……、今日、休んじゃいたかったなぁ……。って、ダメだよね……同じクラスだし、避ける訳にはいかないよね……」

「明日菜……大丈夫?」


 気遣うように双葉が声を掛けてくる。


「とりあえず、死なないていどには……」


 それより。


「昨日は迷惑かけてごめん」

「びっくりしたわよ。アイツから突然連絡があって明日菜を迎えにこいって」


 そう、あのあと逃げ去ろうとする私を強引に引き留めて双葉に連絡をとり、双葉が了承し、双葉が母親に頼み、共に車で迎えに来てくれたのだった。


 その後、双葉に『停まりなさい』と説得され、一晩中語り明かした。その間黙って話を聞いてくれていた。


「本当にありかと。正直独りはキツかったから」

「いいってことよ。いつもこっちが助けられてるしね」


 そう言って双葉が笑う。


 話している内に教室に着きドアをくぐると、教室のざわめきが静まり明日菜に視線が集まる。



 ――え……?



 そこには――


 黒板にカラーチョークも使用され、嘲笑するかのようなイラストと共にデカデカと――


        

       天使は朝月に告ってフラれた!!


 と、書かれていた。


 私は時が凍りついたように感じた。


 な……に……これ――



 クラスメイトのざわめきも視線も遠退いていく。


 ――気持ちが悪い……なにも考えられない………………。


「誰がやったのっ!! こんなくだらないことっ!!」


 双葉が怒鳴る。それすらも今の私には遠く。

 私が呆然としているとクラスメイトの男子が近づいてきて。


「これ、マジなんだって? 誰が書いたか知らないけど僕も朝月から自慢されて聞かされたんだけどさ」


「凛……くんが?」


「そうそう、言いふらすなんてホント最低だよね」


 ……最低……? 違う。


「違うっ! 凜くんはそんなこと絶対にしないっ!!」


 そう私が叫んだとき。


「…………これ書いたの誰?」


 私達を見てから、次に黒板を見て一言。


「誰が書いた? 誰でもいい答えろよ」


 今まで聞いたことが無いような冷たい声で、もう一度同じ言葉を更に冷たい声で、私の目の前に立っている男子生徒を冷めた目で睨み言った。

 

 凜くん……?


 すると睨まれた男子生徒がビクッとなる。


 ……このヒトがこれを書いたの?


「お前か……」


 それは一瞬の出来事だった。


「自分が何をやったのかっ! わかってんのかっ!!」


 凛くんが男子生徒を問答無用で殴り飛ばす。


 よほど体重と勢いに乗ったストレートだったのだろう。

 一瞬浮き上がり机を巻き込んで倒れる。


 ざわめきと悲鳴、倒れ込んだ男子に殴り付ける凛くんを親友の二人が羽交い締めをして止める。

 私は怖くて見ていることしか出来ず――


 その後、騒ぎを聞き付け駆けつけた教師により、凛くんとクラスメイトの男子は校長室に呼び出しをうけ、二人の母親を含めて事情を聞かれ説明していた。


 相手側が騒ぎたてたものの、相手側、学校側を凛くんがやり込めて学校側の責任とし、処分が下ることになった。



 私はただ掲示板を見ることしか出来なかった。


          停学処分


         3ーA 朝月 凜


       上記の生徒を一週間の

         停学処分とする。



 私が呆然と立ち尽くしていると。


「……天使、ご、ごめんっ! 天使の言う通り、僕、朝月から何も聞かされてないんだ……。僕ずっと天使のこと好きで、朝月のことなんか嫌いになってほしくて、あんなこと…………」



 私は目の前の身勝手な理由を並べる男子に怒りを通り越して、醒めて行く感情のまま言葉を紡ぐ。


「…………今更……今更泣いて謝るくらいなら最初からあんな事しなければいい…………。仮に貴方が言ったような事になったとしても、私が貴方を好きになる事なんて絶対に無い。ヒトを待ち伏せして告白を立ち聞きして、彼を貶める貴方を好きになる事は無い。貴方が彼に言ったことをそっくりそのまま返すわ」


 腫れた顔面を蒼白にして絶望したように立ち尽くす男子を捨て置き、私は踵を返し、その場を立ち去る。


 ……どうして……私の事なんて…………


 なのに、凛くん……私、どうしようもない…………


 庇ってくれて嬉しかった…………


 私の歩く早さが速くなる。逸る気持ちを抑えられず私は走りだす。


 ……そっか……フラれた瞬間からずっと辛くて苦しくて、こんな思いするくらいなら告白なんてしなければよかったって思ったけど……。



 凛くんの家に辿り着いた私は、はずむ息を整えるのももどかしく、呼び鈴を鳴らす。


「り……凛くんっ!凛くん……凛くん! 朝月 りーーんっ!!」


 私が叫び終え、一瞬の静寂――


 ドアが開き凛くんが姿をみせる。


「はぁ……」


 そして、呆れた様な溜め息。


「……何度も呼ばなくても聞こえてるって」

      

  だけど……こんなにハッキリしてる

        《好き》を――


「で、何? こんな時間に」

「私っ!」

  

  ――胸に抱え続けるのも忘れることも出来る訳がないから――


「私、やっぱり凛くんのことが好き!!」


         ――大好きです。


「昨日私の為に怒ってくれてありがとうっ! 私まだ……諦めたくないから……それだけだから……」


        フラれて終わり、じゃなく――


「明日菜……」


         これからがはじまり――


「明日菜、約束」

「え?」


 ……あっ。


 私は思い当たり。


「うん、約束っ、絶対たからねっ!!」


 ああ、という凛くんの声を聞き、私は頷き歩きだす。


      

        色々な想いを乗せて

          私達は夏休みを迎える。

4話 好きと言う気持ち

いかがでしたでしょうか?楽しんで頂けましたでしょうか?

いただけたならば幸いです。

お付き合いいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ