プロローグ
はじめまして白花と申します。
「あーもうヤダッ。試験なんて早く終わってくれればいいのに!」
「明日から双葉の苦手な教科づくしだもんねぇ」
昼休み私の机に顔を伏せて落ち込む親友を、もう一人の親友である琴羽が苦笑して慰める。
私がそれを微笑ましく眺めていると後ろから――
「明日菜」
と、声をかけられ振り向く間もなく、自分のお弁当の中から玉子焼きが食べられてしまう。
「凜くん……自分だって作れるんだから、いい加減自分で用意しなよ」
私の玉子焼きを奪った犯人―― 凛くんを睨む。
「ヤダ、自分で作って自分で食べる。こんなにかったるい事は……無い」
かったるいって……。
「しょうがないなぁ君は、良いけどちゃんと他で返してよね」
私は呆れ気味に凛くんを見る。
凛くんは腕を組み考える素振りを見せ――
「ほか……ねぇ。んー……じゃあ、コレで返すってことで」
そう言うと彼は私の机に長細い袋を置くと廊下へと出ていく。
わたしが置かれたものを見るとチョコスティク菓子―― しかも私の好きな苺のホイップクリームチョコだ。
「こんなの用意するくらいならお弁当作ればいいのに」
――本当、意味わからない――
「いつも飄々としてて絡みづらい」
私は、ねえ、と親友の二人に同意をもとめる。
「明日菜、顔ニヤけすぎ」
「ホントはかまって貰えて嬉しいくせに」
「えっ!?」
私はそんな反応を示す自分にも驚いた。
そして親友二人はというと、訳知り顔でそんな事を言う。
私は顔が熱くなるのを感じて慌てて否定する。
「そ、そんなんじゃないってばっ!」
「そうかな〜朝月ってさ、明日菜のこと好きだよね?」
そんなことを双葉が口にする。
「明日菜にばっかり、ちょっかいだしてるし」
琴羽が言葉を受け継ぎ、双葉が決定的な言葉を明日菜に投げる。
「アイツが名前で呼ぶの明日菜だけだし大丈夫だよ。絶対両想いだって、夏休み前に告白しなよ明日菜」
双葉の言葉を聞き――
両想い―― そう……なのかな……。
私は窓の外に目を向け物思いに耽る。