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ぼく、たぬき。

作者: こめ

ぼく、たぬき。

先の白いふかふかのしっぽが自慢。

ときどき寝ぐせが直らなくて、ぬらすとぺそっとなっちゃう。

寝るときはふかふかのしっぽをかかえて寝るので、寝ぐせがついちゃう。

おなかがちょっとでっぱってるのがなやみ。

会社まで電車で12分の「はちの巣」に住んでいる。

おっきな、おっきなマンションの小さな一部屋で、俗に言う「ワンルーム」ってやつだ。

きっと、あのマンションは全部同じ部屋だ。みんな同じ側に入口があって、外からみると、

おっきな「はちの巣」みたいだから、ほんとは長いカタカナの名前がついているんだけど、

ぼくはあの巣穴を「はちの巣」と呼んでいる。

慣れれば、都会の巣穴も悪くない。

東京に出てきて早6年。たぬきだとばれないように暮らしていくのは大変だけど、

だいぶんそれもなれてきた。


なれないのは、通勤電車だ。会社のおじちゃんには「たった15分しか乗らないのに」といわれるが、

たった15分でも通勤の満員電車はほんとにつらい。ぼくはたぬきなので、パーソナルスペースが広い。

出来れば隣の人と1.5mは離れたい。けど、満員電車ではそんなこといえない。全然知らない人と、抱き合うような形で15分を過ごすことになることもある。抱き合うのはつらいので、せめて背中合わせになりたいと思うけど、1度そんな体勢で抱き合ってしまうと、向きを変えるのは一苦労だ。ぼくのしっぽはみんなに踏まれ、ぺそぺそになるし、こづかれたり、突き飛ばされたり、蹴り飛ばされたりしながら15分を終える。

この間の月曜日はうしろの人に突き飛ばされて、ホームに転げ落ちた。

電車を降りるころには、ほんとに磨耗したぼくがいる。磨り減ってなくなっちゃうよ・・・おなかでてるけど。

それに人間は耳が悪い。どうしてあんな大きな音で音楽が聞けるんだろう。イアホンからなんの曲がかかってるのかまるわかりなほどの爆音で聞いてて、耳は痛くないんだろうか。隣にいるぼくの耳が痛いんだけど。

会社のおじちゃんが「ニッパでプチっと切ったろかと思う」と言ってたから、中にはアレがうるさく感じる人間もいるんだと思う。早く電車の音楽禁止か、音漏れしないイアホン義務付けのどちらかを節に願う。

満員電車の香水もつらい。女の人でも、「ちょっと・・・」という人もいるが、「ぎょえ~」と言いたくなるのは男の人の方が多い。どうやらタバコの臭い消しらしい。タバコをすう人は鼻が悪いらしいけど、あの香水をかいでいると、確かに鼻が悪いんだろうと思う。つけすぎだよ、絶対。仁丹食べる方が100倍マシだから。

そんなこんなで、朝の15分は、苦行だ。修行なのか。人間はいくつになっても鍛錬を怠らないものらしい。




ぼくの働く会社は「神田」にある。会社はおじちゃんばかり。気のいいおじちゃんばかりで、

居心地はけっこういい。

ただ、おじちゃんばかりだから、世話は大変。何度言っても、「ボールペンがない~」とか「チケットの取り方がわからない~」と騒ぎ立てる。どうやら覚える気はないらしい。

人間なんだから、たぬきよりは記憶力はいいはずなんだけど、いじわるでされてるんだろうか・・・と最初は悩んだが、おじちゃんという生物はどうやらこういうものらしい。


おじちゃんは、ぼくがたぬきかどうかなど考えたこともないらしい。一生懸命働いていると、ときどきおやつをくれる。人間の男は甘いものを食べないのだと思っていたけど、どうやらおじちゃんという生物はちがうらしい。チョコレートやキャラメルやクッキーなんかがポケットから出てくる。おじちゃんは甘いものをよく食べる。


ちょっとおなかがでっぱってるのが悩み。

趣味さんぽ。でっぱったおなかを引っ込めるために一生懸命歩こうと思うのだけど、

気がつくと、なんだか色々考えてて、ふわふわ夢の国を歩いてる。

おなかがひっこむ気配はまだない。


好きな食べもの、ちりめんじゃこ。

いけないとはわかっているけど、すきな食べ物ばっかり食べちゃう。

去年の今頃はきなこぼた餅ばかり食べていた。


住まい、東京。

都会の町は、たぬきにつめたい。

今日も電車でつき飛ばされた。

電車のとびらに自慢にしっぽが挟まって、いっぱい毛がぬけた。

・・・・いたかった。10えんはげがまたできちゃう。

ぼくの自慢のしっぽは電車ではじゃまものみたいで、

みんながけとばしたりふんづけたり、する。いたい。

ふかふかのしっぽが、電車を降りると、ぺっそりになってる。




ぼく、たぬき。

スキップが上手にできない。

みんな、ふわーん、ふわーんと軽やかにすきっぷするのに、

なぜかぼくだけ、ととん、とととん、と不規則なリズムになる。

なんだか、ワンフレーズ多いような気がするんだけど・・・まあいいか。


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