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鏡の中の少女

 わたしは自宅のベランダで、日が沈んだあとの空を眺めている。こんな風に雲がピンク色に染まる空を、久しぶりに見た。わたしが夕日に当たって15才の姿に変わると、はるは怖がって泣く。だからいつもこの時間、わたしは台所の隅で小さくなって、夕日を浴びないように気をつけていた。


 今ははるがそばにいない。それに今日は、夕飯を作らなくてもいい。わたしは開放的な気持ちになって、たっぷりと夕日を浴びた。


 もうそろそろ、わたしは35才に戻る。もう少しだけ、きれいな空の色に見とれていたい。けれど、眺めているうちに、雲はどんどんと黒く変わっていく。辺りが真っ暗になってきた。わたしはあきらめて、家の中に戻る。


 これから化粧直しをして、また母の家へ行かなくては。はるが寂しがって泣いているだろう。それに、急にはるを預けたりしたし、母の旦那さまの佐伯さんに、きちんとご挨拶をしておかないと。わたしはそんなことを考えながら洗面所へ向かい、鏡の上のライトをつけた。


「ちょっと、何で」


 わたしは茶色い髪をして、制服を着ている。わたしは15才の姿のままだ。何度まばたきをしても、それは変わらない。そのまましばらく待ってみた。試しに一度、鏡の前を離れて、また覗いてみる。思いつく限りのことをすべてやった。なのに、わたしは35才には戻れない。


 日が沈めば、わたしは15才から35才の身体に戻る。これまでは、いつもそうだったから、今日もまた同じように戻れるものだと簡単に考えていた。でも、事態はわたしが思っているほど軽くはない。元の姿に戻れなくなって初めて、それを思い知った。


 わたしは長い時間、鏡の中にいる15才の少女を見つめた。あんたなんて消えてしまえ、と、その子を呪った。その少女も、恨めしげな目でわたしを睨み返した。

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