突然、問い詰められる
拓途がうちの職場に現れたあとも、連絡がつかない。LINEでメッセージを送っても、いつまでも“既読”のマークが出ない。拓途は、私のメッセージを読んでいないのだ。私は毎日、スマートフォンを眺めて、ため息をついた。
6月に入る前に、梅雨がきた。どんよりした天気が続く。拓途に会いたくても、私は夕日を浴びなければ、15才の姿になれない。
私は、彼の家がどこか知らない。咲和ちゃんに、自宅の場所を訊こうと思った。夜にでも訪ねたら、拓途も家にいるだろう。一瞬でいいから拓途の顔を見たい。けれど、気軽に家へ行けるほど、私は咲和ちゃんと親しくない。
悩むばかりで何もできず、時間だけが過ぎる。そして突然、拓途からLINEのメッセージが届いた。
それは、曇り空の日だ。
>今どこ
愛想もない3文字が並ぶ。『久しぶり』『元気?』なんて前置きもない。それでも。
拓途があの長くてきれいな指で、文字を打って送ってくれた。それだけでも、私はじんわりと幸せな気持ちになる。この半月ほど、拓途とまともに話せていない。その間に、私の想いは大きく膨らんだ。
私はそのとき、保育園に娘のはるを迎えに行って、駐車場で車を降りたところだった。車に鍵をかけていたら、鞄の中でLINEの着信音が鳴った。私はスマートフォンを出して、画面をいじりながら歩く。
< はるを保育園へ迎えに来てる
私は返信する。でも、彼から反応はない。
< 拓途はどこにいるの?
私はもう一度、メッセージを送ってみる。
>俺の知ってるなつは
>どこにいる?
拓途から返事があった。彼の言いたいことがわからない。どういう意味か訊こうとした。
そのとき、私は誰かとぶつかりそうになる。
「すみません」
私は左へ避けた。すると、相手も私と同じ方向へ身体を寄せてくる。次は右へ避ける。相手もまた、私と同じ方向へ行こうとする。
私はムッとして、相手の顔を見る。
制服姿の拓途が、そこに立っていた。彼は、私のスマートフォンを覗き込む。
「へえ。あんた、今、LINEやってたんだな」
拓途が冷ややかな目で、私を見下ろした。
「誰としゃべってんの?」
私は、答えに詰まる。
「あれ? 俺のやつと同じこと書いてあるね」
拓途はわざとらしく言って、彼のスマートフォンを私に突きつける。拓途が見ていたLINEの画面を、私にも見せる。私と彼の、ふたつのスマートフォンに、同じ文面が並んでいる。
きっと拓途は、彼が恋した15才の少女『なつ』と、彼の前にいる35才のおばさんが同一人物なのだと気づいている。拓途はそれを確かめるために、私を言い逃れできない状態へ追い詰めた。
なぜ彼が真相に気づいたのかわからない。とにかく、拓途に嘘をつき続けられない。私は自分の正体を伏せていたことを、謝らなくてはいけない。




