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 裏ルール・その2

「いいか、耳の穴かっぽじって、よぉく聞けよ?」


 悪魔は中腰の姿勢でひそひそと話し出した。


「『願い』の承認ってのはな、一見オレがやってるようだが、実際は、くだんのクソッタレな上司が行ってるんだ。実務の手順を言うぜ? まずオレとお前が契約を交わすだろ。すると、上司の元に契約書がいく。その後、お前が『願い』を1つ告げた時に、『こういう内容の願いを叶えてくれ』って書面を、オレが上司の元に送るんだ。そいつに上司が判を押したら、溜めてある魔界の『力』……『魔力』って言ったほうが分かり易いか? まあともかく、そいつを使って履行するわけだな。人間は魂を3分の1渡し、悪魔は願いを叶える。これで晴れて決済だ」

「一瞬で行われている印象があったが、違うのか」

「そいつは、魔界のイメージ戦略ってやつだな」


 悪魔はニヤリと笑った。


「で、だ。通常は3枚出して決済されると、魂を取る。そして契約書と願いの紙3枚は丸ごと保管庫に移動ってわけだ。ここまで行ったら、悪魔の管轄を離れちまうから、もうどうあがいても手を出せねえ。――そう。全部決済、『されたら』な」


 悪魔は長い舌で舌なめずりをした。体は青いが、舌は鮮血のように真っ赤だ。さぞかし嘘がうまいのだろう。


「ここからが面白いぜぇ、大輔?」


 悪魔はさらに僕の耳に口を近づけた。


「いいか? 上司を始末するついでに、その書面も消しちまえば、願いを全く履行していないように見えるだろ? 魔界ってのは案外、人間界と似通っててなぁ。お役所仕事の契約社会なんだ。『書面がない』ってのは重大な欠陥事由でな、なんやかんやと難癖をつけようが、結局は、もういっぺん願いを叶えるように動く仕組みになってるのさ」

「使用した記録みたいなものは残るんじゃないのか?」

「へっ。もしそれを追及されたら、『オレは利用されたんですぅ~。上司が魔力を不正に貯め込んでた件に使われたんですぅ~』とか泣きじゃくって、あいつが書類を処分したように偽装するのさ」


 悪魔は手をひらひらさせた。


「あとな、上司の奴ァ、悪魔の間じゃすこぶる評判が悪くてよ。失踪したり不審死を遂げたりしたところで、あえて真相をほじくり返すような奴なんか誰もいねえ。かくしてオレ達ゃ、9つの願いをもう一周できるって寸法だぜ」


 どうだと言わんばかりにふんぞり返ったやせぎすの悪魔に、僕は不覚にも吹き出した。


「あン? 何がおかしい、大輔?」

「いや、すまんすまん」


 悪魔が怪訝な顔をしてみせたので、分かるように言ってやった。


「お前のそのアイディアだよ。自分にも旨味があると分かったら、途端に親身になって僕の世話を焼き始めただろう?」

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