「知恵はそこそこあるか」
「――なるほど、な」
悪魔は、自信満々の僕に向かって、紫色の目を細めた。
「なるほど、なるほど……。大輔の願いを増やさなければ、オレの願いも叶えられないか。――お前、日頃から、悪魔にあったときの『願い』対策みたいなことでも考えてたのか?」
「まさか。そこまで空想力は豊かじゃないさ。ただ……」
「ただ?」
僕は頭をかいた。
「人に何かを頼むときは、デカい話になればなるほど、無償の奴よりも、相応の見返りを求める奴のほうがアテに出来る。それだけの事さ。――あとな、仮にお前が、僕の願いを歪めて叶えたとしよう。そのとき、僕が律儀に『4つめ』だからといって、お前の願いを聞き入れてやるお人好しだと思うか?」
「フン。知恵はそこそこあるか」
すると悪魔は、やにわに僕の胸ぐらを掴んで力ずくで立たせた。
「だが足らねえよ、バーカ! お前、オレの願いを4つめに叶えると言ったか? たしかに、たしかに。お前自身は3つの願いの確実性を担保出来るなぁ。また、オレにくれる願いが、増やした挙げ句の『最後の願い』ってわけじゃねぇのもいいセンスだ。そんなことされたら、途中で満足されたとき、オレは結局逃げられちまうもんなぁ」
悪魔はぐっと顔を近付け、粘っこく僕をのぞきこんだ。
「だがよ~ぉ、オレに叶えさせる願いが4つめ『だけ』だったとしたら、その後は全然オレにメリットがねえよなぁ~? お前の願いを歪めちまうかもしれねえぜ? いいや、ハッキリ言ってやろう。『歪めるぜ』?」
その後、悪魔は急に馴れ馴れしく僕の首の後ろに腕を回したかと思うと、数多くの人間をたらしこんできたであろう極上の笑みを浮かべた。
「だからよお……。4つめから先は、『交互に叶える』のが、お互いを欲で縛れるイ~ィ関係だと思うんだよ。どうだ?」
僕は悪魔の間抜けな顔を横目で見つつ、ぽつりと呟いた。
「まあ、知恵はそこそこあるか」