「手ぶらで帰れ、ゲスめ」
僕が願いを告げると。
パンッ……!
世界全体が色褪せて、ビデオの早廻し逆再生のようにギュルギュルと時間が戻り出した。
「すぐに戻りきるぜ」
「ああ」
アミエルと言葉少なにやりとりを交わした次の瞬間。
目と鼻の先で、さっき死んだ真子が泣きながら頷いていた。
「真子、次は気絶しろ」
僕は素早く言った。
「早くするんだ」
「え……?」
「気絶しろ……早く!」
真子からしたら、さっぱり意味が分からないだろうが、それでも、魔法で巨大な『光』を作り始めた。事前に「僕の言うとおりにするんだ」と言っていた小細工も効いたのかもしれない。
「な、なんで我が輩が人間界に……!?」
エヴェレットが、先ほどいた位置で辺りを見回していた。すぐに僕達を見付けて「ああっ!」と声を上げるが、もう遅い。
真子は、強烈な『光』を放ったあと、ふっと意識を無くした。今度はしっかりと抱きかかえる。
「小僧ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
エヴェレットの怒号が響き渡るが、僕はかえって冷静になった。
「やあ、エヴェレット。さっきはちょっと別れの挨拶が淡泊すぎたよな?」
真子を優しく地面に寝かせた僕は、やおら立ち上がってエヴェレットに向き直った。
「あれでお別れとは、礼儀がなってないぜ。なのに、土産はしっかり持って行く……。不逞の輩、ここに極まれりだな」
僕は、中指で眼鏡のブリッジを押し上げた。
「手ぶらで帰れ、ゲスめ」
「小僧ーーーーーーっ!!!」




