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「ひとまず、願いを9つにしてくれ」「オッケー!」  作者: ラボアジA
第四章 情報を握るということ

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「TVばっか見てると馬鹿になるぞ」

 ――そりゃあ見抜く奴はいるよな。ことにトフォリ、お前は気付くと思ったよ。


「仰ることが、よく、分かりませんが……」


 僕はそれでもしらばっくれてみせたが。


「フフフ、そういう芝居はいいよ。先に協力したのは何のためだと思う? 力を貸すってことを示したかったんだよ」


 トフォリは金髪をかき上げた。


「アミエルに聞いてるかもしれないけど、現在の仕組みは、上司に媚びた悪魔だけが甘い汁を吸えるんだ。そんなときに、わざわざ美味しくて大きな果実をもぎとらせたくはないのさ。――でもね、困ったことに、正面切って反逆する悪魔もなかなかいないんだよ。アミエルみたいに姿を固定されたり、あるいは、もっと悲惨なことになるからね」

「ですが、アミエルはまだ刃向かおうとしてるようですけれど」

「そうさ。だから上には目を付けられる。――現場からは、結構好かれてるんだけどね」

「そうですか? かなりイジられていた気もしますが」

「人気者だからこそだよ。普通、表立って罰を食らったら、そいつには近付かないよ? だって、自分も仲間だと思われたら、同じように罰を食らうかもしれないからね。でも、彼には、『忙亜市でエヴェレットが災害を起こすらしいぞ。今は参加者を募ってる』って情報が流れるし、彼がタダ乗りしても、誰も告げ口しない」

「それは……」


 僕は眼光鋭くトフォリを見据えた。


「使い道があるから、だろ?」

「おっ、いいねぇ、それがキミの本性か。――うん、人間にしとくには勿体ないよ」


 トフォリは軽くいなした。


「もちろん、持ちつ持たれつさ。――ただ、ボクの読みだと、アミエルが叛旗を翻したところで多分負ける。だから、さっきまでは、アミエルにそこまで肩入れする気はなかったんだよね」

「じゃあ、なぜ協力する気に?」

「そりゃあ……、キミだよ」


 低い声と同時に視線を寄越すトフォリに、ぞくりと悪寒が走った。


「変だったんだよねぇ、さっさと魂を取るってアミエルは言ってたのにさ。だから、次に会うなら災害の後だと思ってたのに、キミを引き連れて病院に顔を出すなんて。普通じゃないよ」

「……」

「そこでピンときたのさ。ああ、これは願い関連で、よほどうまいことを持ちかけられたなって。――そうだねぇ、『アミエルの願いを叶える』とか。どう、あってるかい?」


 外で日差しを浴びているときとは違った、嫌な汗がじっとりと脇を伝う。


「ところで、さっきのキミの仕掛け、面白いねぇ。少人数が気付いても、数の暴力で多数を煽れば、結局従うしかない……うん。愚か者が多数だと考えてる騙し方だよね。仕組みもキミが考えたの?」

「――大元はマスメディアだ」

「なるほど。『TVばっか見てると馬鹿になるぞ』だっけ? ――なかなか楽しい洗脳装置だよね、あれ」


 トフォリは含み笑いをした。


「ともあれ、キミがつけばアミエルの成功率も上がると思ったんでね。だから、売り込みを掛けてみたのさ」

「……」

「困ったときは力になるからね。遠慮せずに、頼ってくれていいよ」


 トフォリは僕の肩を叩くと、「さて、戻ろうか。どうせみんなと詳細をつめるんだろ?」と言って、先に戻っていった。

 ――とても頼りになるが、自らは決して危険地帯には踏み込まない奴か……。僕は大きく息を吐くと、重たい足取りで後を追った。

 少しでも危ういと感じたら、敵につくってわけだ……。やれやれ、クセ者に目を付けられたな。

 戻った僕は、悪魔達に細かく指示をだした。トフォリを始めとした面々は、極めて協力的だった。

 ――すでにさいは投げたんだ。迷っても仕方がない。あとは全力で突っ走るだけか。

 事前の段取りを全て終えた僕は、眼鏡をしっかりと掛け直した。

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