「稼ぎ時だからだよ」
「おいおい、何を言ってる、アミエル?」
僕は溜め息をついた。
「日本担当は666人と言ったか。それ以外の悪魔は、ここに来られないのか?」
「ああ、シマが違うからな。縄張り荒らしは御法度だ」
「今、あと何人ぐらいがこの眠り病計画に参加しそうか分かるか」
「あー……いや、分かンねえな」
「なら、逆に聞こう。担当する悪魔のうち、この計画に参加しない者はどのくらいいるか分かるか?」
「……? それを聞いてどうするつもりだ」
「666人から、参加しない悪魔を引く。大事をとって、その8割ぐらいで大災害を引き起こすと考える」
「――ほお。だが、次の瞬間にも使ってくるかもしれねえぜ?」
「たしかにそうだが……、可能性は低い」
「なんでだ?」
「稼ぎ時だからだよ」
僕は胸を2回叩いた。
「いいか? 僕は気付いたが、それ以外の人間はまだ誰も気付いていないんだ。とすると、敵についている悪魔は、もっとこの計画に他の悪魔を引きつけたほうが断然得なんだよ。恩も売れるし、魔力の取り分も……折半なのか? それも回収できる。さらには、大災害なら周辺の人間もパニックだろうから、それこそ悪魔の独壇場だ。うまく取り入れれば、五周、十周と魂を回収できるだろう。とすると、始めに集めておく悪魔の数は、多ければ多いほどいい」
僕は、ここで一息ついた。
「ジャマー1つで封殺したんだ。敵は頭がいいと想定していいだろう。ならば当然、『この程度の人数で大災害など発動させない』。理屈に合わないし、利益もない」
「――なるほど」
低い声でアミエルは言った。
「参加しない奴らは、上司連中が6人、事務が60人、オレみてーな奴が30人ってトコだ」
「とすると、666人から引いて、570人。8掛けで456人。300引いて156。――今日明日でどうこうという数字じゃないな。まずは、敵にこちらが『知られていない』というアドバンテージを活かすとしよう」
「具体的にはどうするんだ」
「急ぐ必要があったら、今すぐ対決だった」
「敵の場所知らねえだろ」
「アミエルが知ってるだろ? 折半相手の情報を」
「――そりゃあそうだがよ」
「だが、そこまで急ぐ必要はないと分かったからな。とすると、まず行く場所は、病院だ」
「なに?」
立ち上がった僕を見て、アミエルは顔をしかめた。
「おいおい。まさかそこは、オレの同僚がわんさといる、市内の病院か?」
「今の話の流れで、他にどこがある」
「あんまり人混みが多いのはイヤなんだよな。あと、オレは参加してねえってのもあるし……」
「ぶつぶつ言うな。――そうだ、アミエル。お前にもちょっとした演技をしてもらうぞ」
「はあ? 何すンだよ?」
「なあに」
僕は笑みを浮かべた。
「得意なことだ」




