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「ひとまず、願いを9つにしてくれ」「オッケー!」  作者: ラボアジA
第三章 ひそやかな反撃

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「始めから詰んでたのさ」

「今、悪魔達の間では、ちょっとした祭り状態になってるんだ」


 アミエルはベッドの上でゆらゆらと浮かびながら言った。


「魂回収のためとはいえ、自ら手は下せない。といって、他の悪魔がわざわざ手を下すわけもない。もちろん、故意に危険な所で眠らせてもダメだ。少なくとも、眠ったときは安全な場所でなくっちゃな。とすると……」

「眠らせたあと、『人間が殺せばいい』わけか」

「ビンゴ!」


 アミエルは心底楽しそうに親指を立てた。


「いやー、医者が首謀者か、あるいは抱き込んでたら、もうとっくに終わってたんだがな」

「そんなに簡単な話でもないだろ」


 いざ殺すとしても、300人だ。自分で手を下したら極刑は確実だし、願いを使ってバレないように殺しても、今度は医者自身に旨味がない。


「――いや、待てよ?」


 逆にいうと、旨味があればいいのか。

 僕は、眼鏡のつるをなでた。


「なあ、アミエル。例えば僕が大災害を願った場合、魔力を用意すれば面倒な会議は不要なんだな?」

「くくく、やっぱお前なら気付くか」


 アミエルは触覚のひとつを弾いた。


「ああ。災害の規模によって変わるが、必要な量を用立てちまえば問題ないぜ」

「なるほど。それなら利益があるな」


 僕はゆっくりとアゴをさすった。


「派手な事件が起きるのを知っているというのは、それだけで強みになる。例えば、大災害が発生すると分かっているなら、事前に日経先物を空売りするだけで楽に億万長者だ」

「そんだけ分かってりゃあ、お前も楽にその尻馬に乗れるだろ?」


 僕が睨みを利かせると、アミエルは両手を上げ、降参ポーズでおどけてみせた。


「おいお〜い、だっからよぉ、『出来る』って話なだけだろ? 別にしなくったっていーんだよ」


 僕はアミエルの戯れ言を無視した。


「ときにアミエル、300人分からかすめ取れる魔力はどのくらいだ」

「それなら願い900個分だから……、オレなら震度6か7ぐらい起こせるぜ」

「ふむ。――弱いな」

「弱い?」

「ああ、地震だけじゃ駄目だ。交通網を寸断するためにならやってもいいが、それだけだと、生き残る可能性が高すぎる」


 僕は、窓から見える霊峰――花間仁山はなまにさんを指差した。


「あの山は、今も活火山だという。あれを爆発させるなら、どのくらいの魔力がいる?」

「んー……まあ、ざっと願い2000個分ってトコかな。それがどうした?」

「夜中に地震を発生させた後、手前の西麓で大噴火を起こして、忙亜ぼうあ市一帯に火山ガスと火砕流を流す。これなら助けも間に合わない」

「なるほど、それならほぼ確実に殺せるよな」


 アミエルはパチパチと拍手をした。


「くくく、今の推論は、悪魔達に伝わってる話と大体同じだぜ」

「お前はなぜ参加しなかったんだ?」

「これに加わると、魔力の取り分が折半なんでな。いくら夢でなら魔力を使わないっつったって、半分もってかれるぐらいなら、もっと効率よく稼げるぜ……。オレならよお」

「それにしては、参加者が多い気がするが」

「あァん? 日本担当は666人もいるんだぜ? ケッ、ここにゃ半分もいねえじゃねえかよ」


 それだけいれば上等だとも思うが、まあ、見解の相違ということにしといてやろう。

 アミエルは腕をぼりぼりかいていた。


「ま、お前はよくやったが、残念だったな、大輔」

「――どういうことだ?」

「だって、分かっただろ? 敵がいることは明白で、魔力も潤沢ってのも予想がつくだろう。ならよお、少しでも怪しい素振りがあったら、多少の予定なんぞムシして即座に発動するだろうぜ」


 アミエルは手をひらひらしてみせた。


「なぁーに、気に病むこたぁねえ。始めから詰んでたのさ。まあ、せいぜい巻き込まれないように、脱出用の願いでもしておけばどうだ?」

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