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「『出来ない』わけじゃないんだな」
「――何ぃ?」
浮遊を止めた悪魔は、ゆるゆるとベッドに沈み込むと、上半身を起こして脇へと座り直した。
「おいおい……。3つの願いを叶えるのはオレの方なんだぜ? ただのコーコーセーのお前が、何をしてくれるっつーンだ?」
悪魔はからかいつつ、派手に頭を振った。
「それともお前、あれか? ダメ元でも願いを増やそうとあがくような人間が、たかだか3つしかない願いの1つを、オレに恵んでくれるっつーのか?」
「違うな」
僕は首の後ろを小刻みにかいた。
「増やした願いで叶えてやる。僕は、そういう提案を持ちかけてるんだぜ」
「おいおい。だからよ~ぉ、願いを100個に増やすのはイヤだと……」
「そこだ」
僕は悪魔を手で制した。
「イヤって言葉は普通、『能力的には可能だが、したくない』って時に使うもんだ。つまり……」
手を人差し指だけ残し、悪魔に突きつける。
「『出来ない』わけじゃないんだな?」
ずっと半笑いを張り付けたような悪魔の顔。
そこから、いま、初めて笑みが消えた。