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「ひとまず、願いを9つにしてくれ」「オッケー!」  作者: ラボアジA
第三章 ひそやかな反撃

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 質疑応答

 ――まずは情報収集だな。敵が「願い」を駆使する以上、強力な情報を得ていた方が勝利に近づく。

 僕は引き出しを開け、ノートとペンを用意した。


「アミエルよ。主だった事柄について確認をしたい」


 僕がベッドに腰掛けるアミエルを質問攻めにした結果、分かったのは次の通りだった。


Q1・願いで死者は蘇るのか?

A1・そいつぁムリさ。空の肉体に、そこらの浮遊霊をブッこむことはできるがね。

Q2・人は殺せるか。

A2・ああ、一つの願いで一人な。名前が分かって、そいつの顔を認識出来れば、イチコロだ。

Q3・過去にいけるか?

A3・18秒までなら無制限だ。それ以上は、そのとき魂を得る契約をしていた利害関係者……もちろん悪魔のな、そいつら全員の承認を得る必要がある。18日を超える場合、それに加えて会議が行われて、上司連中の過半数の承認がいる。だから、ごく短期じゃねえと絶望的だわな。

Q4・過去に戻るさい、ちゃんと現在の記憶は持っていけるか?

A4・ああ、願った本人と、悪魔達には記憶があるぜ。

Q5・未来にいけるか?

A5・冷凍保存みてぇな技がある。それを使えばいけるが、悪魔はそんな拘束イヤがるぜ。イヤがるってことは……分かるな?

Q6・未来を見ることはできるか?

A6・チョロいぜ。

Q7・金がほしいと願ったとき、限度額はいくらだ。

A7・そりゃ才覚しだいさ。宝くじで一等を当てるとかは、実際は「未来を見て」当てることになるからな。まァ、今の例だと後腐れはないが、ツマンねぇ使い方だ。

Q8・感情は操れるのか。

A8・操れねえ。モノで釣れよ。

Q9・姿は変えられるか。

A9・変えられるぜ。――なんだ、容姿に不自由してんのか? あっ、メガネか、オイ?

Q10・ターゲットにできるのは一人ずつと言ったが、動植物や無機物についてはどうだ。

A10・へっ、無視かよ。――えぇっと、基本は意志のあるなしで判定だ。植物は意志がない扱いだな。無機物もそうだ。もっとも、森とか建物とか、もはや場所扱いだがな。

Q11・場所を指定すれば、結果的に複数人をターゲットにすることは可能なんだな。

A11・ああ、「範囲:日本」とかな。ただし、範囲と願いによってまちまちだが、魔力量がかさむ場合はやっぱり会議が行われる。実際は、自前で魔力を用意でもしない限り、なかなか通らねえな。

Q12・魔力を用意? どういうことだ?

A12・本来の「願い」に必要な魔力量と、オレらが叶えてやる「願い」のそれに差があれば、手元にはいくらかの魔力が残るよな。そこで、申請としては本来の必要量を提示しつつ、叶える願いをチンケなものに歪めちまえば、残った魔力を自分のものに出来るんだよ。それを溜めといて、ここぞというときに一気に使うのさ。

Q13・不法じゃないのか。

A13・ま、不法なんだが、今は上司クソッタレが腐ってるからな。ちょいと魔力の賄賂を送っちまえば、目ェつぶるシステムになってやがる。

Q14・願いで誰かの願いを打ち消せるか。

A14・基本はできねえ。意志のある相手にかかったものは、大体打ち消せねぇな。ただ、上書きをすることで結果的に打ち消すってことはあるな。

Q15・悪魔は一般人に姿を見られるのか。

A15・さっき言ったとおりさ。お前と同じように、悪魔憑きになった人間にしか見えねえぜ。ついでに言うと、声も聞こえねえよ。

Q16・録音にはお前の声も入っていたが。

A16・だっからよー、悪魔憑きの大輔にしか聞こえねーんだって。妹に聞かせてみろよ、「おにーちゃんが一人芝居やってるー。超キモー」とか言われっぜ?

Q17・悪魔は直接人間に危害を加えられるのか。

A17・お前、都合悪くなるとムシすんのな。――ああ、出来るかと言われれば、出来るぜ。だが、上にバレたら存在抹消だ。こんなリスクを冒してまでやる奴がいるとは思えねえぜ。

Q18・これは全悪魔に共通か。例外はないか。

A18・例外なしだ。ここで出来ねえことを出来るとかヌカす悪魔は、ゴマかしてるだけだぜ。


 ――ふむ。これで大体、願いにまつわる基本的な事項は聞き終わったか。

 僕はペンをノートにリズミカルに叩きつつ、ふと、もう一個質問した。


「例外なしとは言ったが、細かいアヤはいくつもあるんだろう?」

「ほんっとーに抜け目ねえな、お前」


 アミエルは呆れたようにベッドの後ろに両手をつくと、体を反らすようにして天井を見た。


「ああ、そりゃああるぜ。だが、お前だってよぉ、法律の大まかなところは分かっても、細部は説明しきれねえだろ?」


 うあーっと声を上げつつ、アミエルは両手を押した反動で先ほどの座った姿勢に戻った。


「お前にとっちゃ、『言ってなかっただろ!』って思うようなモンもあるかもしれねえが、現時点でオレが思いつくのはこンぐらいだ。厳密にいやあ、そりゃ例外だらけだぜ? だがよお、ちゃんと理由まで聞いたら、理不尽なものはねえハズだ。――っつっても、あんまり信憑性がねえから、こう言い換えてやるよ。『こちとら契約なんざ、クサるほどしてンだぜ? そんなオレらが、理不尽なルールで縛れると思うか?』――魔界が暴力と恐怖でなく、まがりなりにも法で治められてるっつーのはそーゆーことだぜ」

「ああ。合点がいった」


 なるほど。まあ、完全ではないが、概ね逸脱はないか。僕はペンとノートを机に置くと、人差し指をアミエルのほうに出した。


「待たせたな。それでは、2つめの願いを言おう」

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