表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「ひとまず、願いを9つにしてくれ」「オッケー!」  作者: ラボアジA
第二章 戦わせない戦い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/39

「これが……、『願い』か」

 思うに、先ほどはTVと沙織との間を遮っていたので、少しステルスを緩めただけですぐに見破られたのだろう。注目されていない場所なら、もっとステルスを落としても問題ないはずだが、まあ、使うときはほぼマックスだろうから、さしたる検証もいるまい。


「オイ、妹が騒いでるが、いいのか?」

「ほっとけ。すぐに気のせいだったと思うさ」


 僕はアミエルにそう言い捨てると、椅子に座り、机に肘をついた。

 ともあれ、実験結果は良好だったので、さっそく僕は思考のステルスを全開にし、眠り病のことを考える。

 まず、一般に分かっていることを挙げてみることにした。忙亜ぼうあ市の人口は現在13万。そこに今、300人の眠り病患者がいる。発生原因、対処法、いずれも未だ不明。

 ――大事件だな。

 なのに、周りの人間は誰も話題にすらしない。ただ、「眠り病がある」ということを認識しているだけで、別に怪しんだりも不安にも思っていない。

 僕は、ここまで思考出来たことにひとまず安堵し、その後、急速に腹の底が冷えるのを感じた。

 ――本当に、誰も気付いていないんだな。

 そのとき、ふとアミエルを視界の端に捉えた。

 ――いや、違うか。悪魔は気付いている。だが、わざわざ人間には教えない。

 人間は、理論こそ組み立てられないが、事実は把握しているので、過程をすっ飛ばした「願い」なら行える。だから、さっきまでの僕のように、「知り合いが眠り病に罹っているから起こしてくれ」という願いなら頼めた。しかし、悪魔は「願いを歪めて叶える」から、結局救出は出来ない。

 あるいは、よっぽど面白い願いなら気まぐれに叶えるかもしれないが、「眠った人間を起こす」などという願いを、悪魔が気に入るとは到底思えない。

 ――つまり、紛う事なき完全犯罪の成立だったのだ。


「これが……、『願い』か」


 僕は、おもむろに眼鏡を取ると、眼鏡拭きで丁寧に拭き始めた。

 ――考えを逸らすどころか、逸らした認識すら封じる『願い』。

 アミエルの協力を取り付けてなければ、土俵に上がるのもままならないところだった。


「――面白い」


 人間で知っているのは、そいつ……あるいはグループと、そして僕だけか。


「……」


 ――いいだろう。勝負してやる。

 綺麗に眼鏡を拭き終わった僕は、しっかりと掛け直した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ