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「ひとまず、願いを9つにしてくれ」「オッケー!」  作者: ラボアジA
第二章 戦わせない戦い

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「ゲームはほどほどにしとけよ?」

「アミエル。最後に見落としがないか確認だ。隠密ステルス思考妨害ジャマー警報アラームの願いについて、これは伝えるべきという事柄はないか?」

「ふむ。そんじゃまず、ステルスの注意点だがな。姿を認識出来なくさせるといっても、質量まで消えるわけじゃねえ。満員電車に入ったら押し潰されるってこった」

「なるほど」

「次は、アラームだがな。こいつは、『普通』の潜入に必ず気付くってやつなんだ。そしてジャマーも、そこに引っ掛かる『普通』の発想をしたら必ず妨害してくるってやつなわけさ。だから、アラームと考え方は同じなんだよ。どっちも『普通』のものに対しての防御であって、『願い』を使ってすり抜けるなんつー事態を想定してねえ。『ステルス』に気付くにゃあ、『ステルスに気付くアラーム』を、わざわざ別枠で願う必要があるのさ。逆に言うと、願っていた場合は、ステルスも引っ掛かる。あとは、それをする相手かどうかだな」

「そうか」


 ――相手の警戒レベル次第、か。僕は眼鏡のブリッジを中指で押し上げた。

 さて……、どの程度用心深い奴か、だな。

 仮に、これをやっても思考を逸らされたら……。

 ――まあ、逸らされた時か。

 僕は人差し指を立てた。


「よし、いいだろう。アミエル、一つめの願いは『変動可能のステルス』にする」

「オッケー」


 アミエルが何事かぶつぶつと呟いたかと思うと、胸のあたりに白く光る逆五芒星が浮かんだ。それが徐々に薄れていき、ついには消える。


「よっし、願いは叶えたぜ」


 思ったよりも地味だった。派手なエフェクトなどはおまけらしい。


「ステルス状態の変動ってのは、感覚で分かるはずだ。あと、オレにゃ効かねえからな」

「残念。雲隠れは無理か」

「させねえよ」


 軽く冗談を交わしたのち、僕はステルスを使ってみた。


「アミエル」

「聞こえてるっつーの」

「やはり駄目か」

「そんなに逃げてぇのかよ」

「参考までに、どうやったら悪魔との契約を解除できるんだ?」

「直後に聞くたぁいい度胸だな。悪魔が解除したいと思ったときだよ」

「正直に答えるお前も、大概いい度胸してるぜ」


 僕は静かに部屋を出てみた。ちょうど妹の沙織があぐらをかいてTVゲームをしていたので、声を掛けてみる。


「沙織。――バーカ」


 僕の呼びかけに、沙織は振り向かない。だが、これだけではゲームに熱中しているからとも考えられる。

 僕は、TVと沙織との間に立ってみた。普通なら「お兄ちゃん、邪魔!」ぐらい言ってくるはずだが、変わらず一心不乱にプレイしている。

 ――ふむ。目立たない石というより、透明人間になったようだな。

 百聞は一見に如かずか。アミエルのたとえは合っていたが、やはり自分でやってみないと正確なところは分からない。

 次は、徐々にステルスを解いてみた。


「うわっ!?」


 まだかなりのステルス状態だったが、意外に早く気付いたらしい。沙織は後ろにひっくり返った。


「えぇっ!? お、お兄ちゃん、何時いつからいたの!?」

「沙織、夏休みの自由研究は終わったのか?」


 すかさず質問をして、相手の疑問を封殺する。


「もう小五にもなったら、母さん達も手伝わないぞ」

「いや、ちょ、ちょっと待って! お兄ちゃん、さっき急に出てきた……!」

「何をおかしな事を言ってるんだ? まったく、ゲームはほどほどにしとけよ?」


 沙織が「えっ……、えーっ!?」としきりに驚きの声を上げるのを尻目に、僕は悠々と自室に戻った。

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