『1つめの願い』
「おっ、いいぜ?」
アミエルは、僕の願いが近いと知るや、揉み手をすってそばに近付いてきた。
「さてと、大輔。確認事項はなんだ?」
「ジャマーに引っ掛からないようにしたい。出来るか?」
「ああ。それが願いか?」
「必須ではあるが、これだけじゃあないぜ」
僕は腕を組んだ。
「次だ。ジャマーも『願い』のはずだろ? とすると、どういう概念で妨害しているんだ」
「んー……。ちょいと難しいな」
アミエルはアゴをなでた。
「ジャマー系の『願い』ってのは、一種の網というか、センサーみてぇなもんでな。該当する考え方が引っ掛かったら、妨害プログラムが発動するって仕組みなんだ」
「ふうん……。センサー、か」
僕は薄く笑った。
「じゃあ例えば、アミエルが僕の情報を得ようとしたさい、警報装置のように、『アミエルが僕のことを探りに来た』と知るのもセンサーだよな。こういう『願い』は可能か?」
「ん? それってメガネの情報か?」
「やかましい」
まぜっ返すな。僕が鋭く睨み付けると、アミエルは馬鹿笑いをした。
「可能なのか、アミエル。どうなんだ」
「へいへい。ああ、出来るぜ。それが1つめか」
「いいや。――むしろ、逆を頼みたい」
「逆?」
怪訝な顔のアミエルに、僕は頷いた。
「まずは、ジャマーに引っ掛からないようにすること。これは絶対に外せない。あとは、今言ったようなアラーム機能に決して悟られないようにしたり、潜入だったり、あるいは目立たないようにしたり……。ともかく、センサーというセンサーを回避出来る『願い』の中で、最大限に色々出来るものを頼む」
「お前……。後半は、スゲェざっくりしたものになったな」
「どこまでが叶えられて、どこまでが無理かの境界が分からないんでな。専門家の判断を仰ぎたい」
「なるほど。――まず、一言いいか?」
触覚を指で弾いたアミエルは、ゆっくり一呼吸したのちに言った。
「シッブいな~ぁ、お前」




