「誰かが引き起こしたのか?」
「やれやれ。お前の『願い』はもう知ってる。『眠り病のみんなを起こすこと』だろ? だが、それは理由があって出来ない」
「おいおい、アミエル」
僕は注意した。
「それじゃあ納得できないぜ。どんな理由だ? 言え、アミエル」
「ああ、ここまでは大丈夫なのか」
アミエルは、ますます妙な事を言った。ここまで? 何のことだ?
「手短に済ませるぜ? いいか、今オレが理由を言ったら、お前の思考がループする。強引に3つ叶えることは出来るが、それじゃあオレの願いを叶える気にもなれねえだろ? だから言わねえんだ」
アミエルの言い分には、正直納得しがたいものがあったが、嘘をつく気なら、もっと「らしい」ものをいくらでも言えるはずだ。
――とすると。
「確認するぞ、アミエル?」
「へっ、ループも流石に飽きてきた。次で勘弁しろよ?」
僕は携帯に声を録音した。
※ ※ ※
録音内容を聞き終えた僕は、携帯を持つ手が震えていた。
「ば、馬鹿な……」
何とか、それだけを絞り出すのがやっとだった。
アミエルの指摘どおり、そこには入れた覚えのない録音があった。時刻はついさっきになっている。
そこでは、間違いなく自分の声で、「今言おうとした『願い』を言っていた」。
「この現象……、まさか……」
打ちひしがれた僕は、よろよろとアミエルのほうを振り向く。
「誰かが引き起こしたのか?」
「そうだぜ。――悪魔の力を使ってな!」
アミエルは、さもおかしそうに腹を抱えた。




