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瞑想世界97

虚無の滴る汗が悟りなのさと、田村?が言った。

濃硫酸の雨が細胞分裂して、はけないズボンの悲しみとなり、覗く青いビー玉が喋り出した。






田村の声だ。





「これが世界の終末の姿であり、涙の濃硫酸は多次元宇宙の哀しみなのだ。吸われたお前は、お前であるのと同質の宇宙で、俺の哀しみとなり、ミンクの影となるんだ」





僕は村瀬の声を象った肉体を溶かしながら答えた。





「ミンクの影絵が濃硫酸のモノレールになり、感情が軋む動物の哀しみとなるのか?」




田村の声が答えた。





「そうだ。村瀬の言ったカオスの坩堝は実を言うと、アガティスの葉っぱの裏側にある滴る汗で、その悲しみの道筋たる汗こそが終末の偶然となるのだ。その悲しみこそが、逆ユートピアとしての喜びとなるわけだ」





僕は寂寥たるものを感じながら言った。





「それがこの世界の孤独感と不安感を形作っているのか?」





田村が答えた。





「そうだ。人間存在の虚無性の究極の姿と言えよう。それが不可視の悟りの境地なのだ」




僕は嘆息し言った。





「悟りとは虚無なのか?」





「そうだ。無としての有を内在した虚無なのだ」





僕は濃硫酸の海の快感を感じながら言った。




「堪らなく悲しい影絵だな」





田村が答えた。





「そうだ。濃硫酸の雨の降り注ぐ影絵の悲しみさ」






僕は腹を抱え、海の声になり、泡立つように笑った。






その声が引き攣り、僕の瞼をくるりと開き、虚無の水が滴るように目を覚ました。

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