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瞑想世界96
複数としての単数の単一の?細胞となり、濃硫酸の海を泳ぐ僕の悲しみ。
その田村の声が丸い雲となり、シャッターを閉ざすように雨を降らせた。
濃硫酸の雨が青いビー玉目掛けて降り注ぐ。
カオスの坩堝。
複数としての単数の濃硫酸雨が、僕の身体を溶かして行く。
僕は堪らなく哀しくなり、青いビー玉となって濃硫酸の涙を流す。
上としての下。下としての上に濃硫酸の涙が降り注ぐ大海。
僕はその海を泳いでいる。
泳いでいる僕の耳元で田村が囁いた。
「助けてくれ」
僕は叫んだ。
「貴様は村瀬か?!」
「違う。田村だ。助けてくれ」
空の天井に無数の眼球があり、その眼球が溶けながら、濃硫酸の雨を降らしている。
そして下には僕の哀しみの海がうねり、とぐろを巻き、青いビー玉状に飛沫を上げている。
そして僕は回転しながら、その中間を飛ぶように泳ぎ、泣いている。
濃硫酸の雲を美しいと思いながら、飛ぶように泳いでいる。
複数としての単数の無数の悲しみとなって泳いでいる。




