瞑想世界90
それを祈るしかあるまいと、田村が言った。
並んで歩いている田村に向かって、僕は言った。
「しかし、村瀬のあの生い立ちは本当なのかな?」
田村が頷き言った。
「本当だと思う。逆に言えば、あの生い立ちの告白が村瀬の本体である事の証明になっていると俺は思う」
僕はしみじみと言った。
「悲惨な生い立ちだよな」
田村が頷き言った。
「在日韓国人の日本人を呪う力は凄まじいものがあるからな。それがそのまま滅亡装置に辿り着く原動力になっている事も間違いない事実だと思う」
僕は言った。
「あの生い立ちを信じれば、そのまま村瀬の本体である信憑性が高まり、俺達の村瀬救出が滅亡装置発動の惹起になるという言葉も信憑性を帯びるわけか?」
田村が頷いた。
「そうなるだろうな。だから慎重に動かざるを得ないわけさ」」
「俺の実存の石ころの話しはやはり村瀬の罠だったのかな?」
田村がしきりに頷き言った。
「この世界は何でも有りの、意外性が当たり前の世界なのだが、あの話しの筋に沿って話しを進めるしか、俺達には道が無いからな」
僕は息をつき、言った。
「成美ちゃんは無事なのかな?」
田村が前方を見詰めながら言った。
「それを祈るしかあるまい」




