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瞑想世界88
各々心の葛藤に打ち勝つしかないと、田村は言った。
すかさず僕は田村に尋ねた。
「どうする?」
田村が答える。
「これも当然嘘だと考える事も出来るが、逆も真で、慎重に事を進めるしかないだろうな」
僕は恭しく頷き改めて質問した。
「村瀬救出をとりあえず控えるか?」
苦渋の選択を迫られ、田村が腕を組み、目をつむってから言った。
「とりあえず慎重を期して、手控えよう」
「成美ちゃんはどうするんだ?」
田村が腕を組んだまま答える。
「成美ちゃんは助けるしかあるまい」
相槌を打ち、僕は言った。
「しかし、俺達も半分は瞑想装置。その葛藤に負けて、憎悪のままに村瀬に挑みかかってしまう可能性だってあるだろう?」
田村がおもむろに言った。
「相克というか、各々心の葛藤に勝つしかない」




