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瞑想世界72
成実ちゃんが村瀬であっても、殴り倒して連れ帰るだけだと、田村が言った。
迷路に迷い込んだところで、僕は田村に言った。
「村瀬が成実ちゃんの振りをしてうろついている可能性はあるだろう。それは見抜けるか?」
田村が否定した。
「それは無理だな。だがそれでも構わないと俺は思う」
僕は尋ね返した。
「何故だ?」
「成実ちゃんが村瀬でも、今の我々の目的は殴り倒して連れ帰ることだからな。それを実行するまでだ」
僕は顔をしかめ言った。
「しかし村瀬は真正の
瞑想装置だぞ。そんな事出来るか?」
「村瀬にも、自分を朝鮮人と差別されて、怒る人間性が残っているじゃないか?」
「でもそれはエゴイスティックな自我と言うか攻撃性の発露であり悪意そのものだろう。ヒューマニズムではないと思う」
田村が言い切る。
「とにかく、成実ちゃんが村瀬であっても闘いを挑み、ぶちのめして連れ帰るだけだ」




