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瞑想世界61
皆がワームホールの暗黒になり得るのだと、田村が言った。
僕は言った。
「絶対の死とは、全てを飲み込むワームホールのようだな?」
田村が頷いた。
「そうだ。瞑想装置の言われなき憎悪というか殺意にはブラックホールの暗黒が含まれていると考えて良いと思う」
僕は顔をしかめて言った。
「死の概念から解放された豊饒たる喜びを、絶対の死がもたらすブラックホールは全て消し去るのか?」
田村が頷いた。
「そうだ。あの瞑想世界には至るところにワームホールの穴というか騙し絵が、真っ黒い口を開けて待っているんだ」
「村瀬や成実ちゃん、ここにいる二人を含めて、全員があの世界ではワームホールに成り得るのか?」
「そうだ。絶望としての暗黒だ」




