明解世界6
恋するりんごの右回転イメージ法言語を田村は修業法として、僕に提唱した。
田村が言った。
「ヨガにしても仙道にしても修業は長い年月を要するわけだ。だが村瀬の命がかかっている今、そんな悠長な事は言っていられないわけであり、即席でお前に異なる世界に旅立つ術を伝授しなければならないから、よく聞いて欲しい」
僕は田村を睨むように見詰めながら頷いた。
田村が続ける。
「ここではクンダリーニヨガと仙道のミックス呪術を教える。それは胸の前に気の塊たるチャクラの右回転するりんごの恋をイメージして欲しいんだ」
僕は顔をしかめ訝った。
「何だ、それはもう一度言ってくれないか?」
田村が繰り返す。
「だから胸の部位に恋するりんごを想起して、それを右回転させるイメージ法を駆使するわけだ」
僕は思わず失笑するのを堪えてから言った。
「恋するりんごの右回転チャクラ呪術で、異なる世界に行けるのか、おい?」
田村が真剣な面持で頷き答えた。
「出来る。りんごのチャクラ右回転という、その現象が位相に穴を空けるまじないとなるわけだ。行いとしての言葉のまじないだ」
「行いとしての言葉のまじないなんて、そんなの矛盾していて言葉になっていないぞ、おい?」
僕の言葉を遮るように田村が言った。
「位相には我々人間には理解出来ない不可知の方程式があるんだ。だからこのりんごの右回転チャクラの言葉は、異なる世界の数式に訴えかけ、位相の扉を開くのさ」
僕は嘆息してから言った。
「何だかよく分からないけど、とにかくりんごの右回転チャクラを右に回転させて、言葉にすればいいのだな?」
田村が頷いた。
「そうだ。その右回転するりんごのチャクラに恋をさせるべく、これからその練習にとりかかろう」