59/270
瞑想世界59
感知すればそれが常識となり、感知出来なければそれが常識となるだけの話ではないかと、田村は言った。
僕は尋ねた。
「多次元とも言える空間の中で、一つの次元にいる時、魂は単数として捉らえられるが、それを多次元に移行させると、単数としての複数が無限大にあるという事か?」
田村が頷いた。
「そうだ」
僕は水を一口飲んでから言った。
「しかし人間にそれを感知する事は不可能だろう」
田村が首を左右に振り答える。
「いや、仙道では幽体離脱、所謂陽神を体外に出すと、肉体感覚と同時に魂感覚があるからな。それを考えれば、複数としての単数が、多次元宇宙理論の根幹をなす事は想像に難くないわけだ」
僕は改まった口調で田村の意見を否定した。
「しかし再度言うが、常識的な人間にそれを感知する事は不可能だろう?」
田村が答えた。
「感知すればそれが常識となり、感知しなければそれが常識となるだけの話ではないか?」
僕は頷き、言った。
「まあ、それはそうだな」




