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瞑想世界53
村瀬が?俺は田村だと言い張る。
林道。
田村を運びながら僕は考える。
完全なる瞑想装置になって、お互いを殺し合う世界。
ならば、相手の絶対の死を欲する瞑想装置の望みとは何だ?
殺す事に無上の悦びを感じるその目的とは何だ?
「目的など無いのさ」
気絶している筈の田村が呻くように言った。
僕は歩を進めながら尋ねた。
「殺す事の悦びが目的なのか?」
「そうだ」
「田村、お前が村瀬ならば、お前に尋ねたい事がある」
「…俺は村瀬ではない。田村だ。瞑想装置にもなれない憐れな存在の田村だ」
「お前が村瀬であっても、完全体ではない俺にはお前が田村にしか見えないから、俺はお前を助ける。だがお前が村瀬であった場合を想定して、俺の実存の石ころは何処にあるのか教えて欲しいんだ」
田村が低い声で答えた。
「俺は村瀬ではないから分からない」
「村瀬、俺を騙して殺す事が実存の石ころを蹴る事に繋がるのか?」
田村が苦しそうな唸り声を上げてから答えた。
「俺は田村だ」




