瞑想世界5
それも賭けだと、田村は言った。
瞑想修業が始まった。
僕はもう一度田村に念を押した。
「おい、俺はクンダリーニヨガなんて実践するのは嫌だからな。頭頂に熱が篭って死ぬのなんて、真っ平御免だし」
自分の部屋でリラックスした格好のままに田村が頷いた。
「分かっている。俺はクンダリーニヨガを弟子に施せる程のグルではないしな」
ジャージを着ている僕は、胡座をかいて田村と対座する形を取っている。
僕は改めて質問をした。
「ならばどうやって、即席で異なる世界に行ける術を施すんだ?」
田村が具体的に答えた。
「仙道を使って気をコントロールし、幽体離脱させて行く方法を取る」
僕は驚きを隠さずに言った。
「ちょっと待ってくれ。幽体離脱なんかしたら、俺の肉体が消耗してしまうではないか?」
田村が否定した。
「いや通常の幽体離脱とは、仙道の瞑想術における幽体離脱は違うんだ。幽体を離脱させても肉体が消耗しないようにしてしまうからな」
「そんな事即席で出来るのか?」
田村が明解に答えた。
「出来る。クンダリーニヨガにしても、仙道にしても気を導引して自在に動かす事に変わりはないしな。それならばより安全性の高い仙道を選択した方が無難だと俺は考えたんだ」
僕は頷き、再度質問した。
「成実ちゃんも同じように術を会得させるのか?」
田村が首を振った。
「いや、成実ちゃんには施さない。俺達のエネルギーで成実ちゃんを巻き込んで行く方法を取る」
「仙道を実践すると、そんな事も出来るのか?」
田村が冷静な口調で答えた。
「いや、出来るかどうかは分からない。それも賭けだ」