49/270
瞑想世界49
心を失う前に僕は田村を肉眼で確かめるべく急いだ。
僕の善意と悪意の葛藤を、冷静に捉らえる事が出来るのは村瀬しかいない。
悪意のみに色を染めた悪意的瞑想装置に葛藤はなく、客観的にそれを分析、見詰める事が出来るからだ。
ならば田村は村瀬に消されてしまったのか?
魂をも滅ぼす絶対の死が、これ又どんなものなのか僕には分からない。
葛藤する僕は葛藤する田村と同じく脆弱な存在で、村瀬はそんな僕らを容易く消せる存在ならば、その無力を共有する僕に、村瀬を凌駕し、田村を奪還する術はない。
情けなく、ただ幼子のようにおろおろとするばかりだ。
村瀬に対抗する為には完全な瞑想装置になるしかない。
だが瞑想装置になってしまえば、田村に対する友情も失せ、僕は田村を殺すだけの存在に堕落してしまう。
だから早く田村を捜すしかないのだが、無力な僕には、田村の真実を見抜く術は無い。
とにかくプールにいるのが、本当の田村なのかどうかを肉眼で調べるべく、半分瞑想装置の僕は先を急いだ。




