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瞑想世界47
葛藤する心の中を、善意と悪意が目まぐるしく交錯する。
善意と悪意が目まぐるしく交錯して行く。
田村を救出しようという善意を殺してやりたいという悪意が責める。
「朝鮮人など生きている価値は無い。全員殺せ!」
その声に僕の善意が反抗する。
「俺は殺したくない。田村を見付けだし、全員救出したいんだ」
「嘘だ。嘘だ、嘘をつくな。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ!」
悪意の僕に対して、善意の僕が喚き散らす。
「嘘ではない。俺は闘いたくはないんだ。全員救出して生還するのみだ!」
「嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。殺せ!」
「嘘ではない。俺は皆を愛しているんだ。邪魔をするな!」
「嘘だ。嘘だ、嘘だ。嘘だ。朝鮮人を皆殺しにしろ!」
僕は心の葛藤を打ち消す為に、あらん限りの声で雄叫びを上げ、田村を捜す為に歩き出した。
だが田村を救出するために歩き出したのか、殺す為に歩き出したのか、僕には分からなかった。




