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瞑想世界44
狂気と尊厳がせめぎ合う。
分離した田村が、衰弱したまま消えて行くのを、引き止めるべく僕は叫んだ。
「田村!」
すると目の前にいる村瀬が叫んだ。
「俺は朝鮮人ではない!」
重い前蹴りが僕の腹にめり込む。
その痛みが僕の身体を永遠の青いビー玉にして行くのを感じ、僕は雄叫びを上げ、村瀬と対峙した。
「俺は瞑想装置になったんだ。朝鮮人、殺す!」
村瀬が成実ちゃんの金切り声を上げ、叫んだ。
「朝鮮人と馬鹿にするな!」
狂って田村に対する憎悪さえもがもたげて来るのを、僕は跳ね返すように叫んだ。
「田村を返せ!」
村瀬が成実ちゃんの声で答える。
「そんな人は知らないわ。朝鮮人、死ね!」
僕はその声に冷笑した。
「俺は朝鮮人ではない。田村を返せ!」




