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瞑想世界37
狂った瞑想装置を俺達の尊厳で捩じ伏せるのかと、僕は田村に尋ねた。、
電話口の向こうで田村が言った。
「あの空間は心を乗っ取り、悪魔のごとくする空間なんだ。あの空間に完全に心を乗っ取られたら、それが絶対の死と呼べよう」
「絶対の死と言うのは心の死なのか?」
田村が答える。
「そうだ。心の死は不滅なる魂の死なのだと思う。あの空間は魂を完全に死滅させる空間なんだ」
「魂は不滅ではないのか?」
田村が言い切る。
「そんな常識を覆すのが、あの空間の恐ろしさなのさ」
僕は息を吐きだし言った。
「二人の心を奪還すべく、あの世界に舞い戻るしかないが、肉体や心が劣化しない方法はないのか、田村?」
「残念ながら、そんなものは無いだろう。向こうに舞い戻って、自分達の心が発狂する前に、二人をこちらに生還させるしか手は無いと思う」
「狂った瞑想装置を俺達の尊厳で捩じ伏せるのか?」
田村が言った。
「そうだ」




