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瞑想世界30
ゆっくりと登ろうと、田村が言った。
林道に無造作に赤いパラソルが落ちている。
そしてその向こう側は登り坂になっていて、石段が伸びている。
「迷路を突破出来たぞ!」
僕が喜びの声を上げると、田村が相槌を打ち答えた。
「そうだな。あのパラソルを杖にして坂を登ろう」
僕がパラソルを拾い上げ、田村が持っている枝の切れ端と交換し、色めき立つ。
「上に行けば吊橋かな?!」
田村が力無く首を振り言った。
「分からない。でも登るしか無い」
僕は田村をいたわった。
「大丈夫か、登れるか?」
パラソルの杖を支点にして一歩だけ前に前進し、田村が言った。
「ゆっくりと登ろう」




