瞑想世界3
何故村瀬に出来て、お前には出来ないのだと、僕は田村に尋ねた。
強く僕は主張した。
「アガティスの葉っぱに俺の実存的生命観が描かれているならば、田村お前はその葉っぱを遠隔瞑想で見る事は出来ないのか?」
田村が答えた。
「俺としてはそれは試みたのだが、出来なかったのだ」
僕は疑問符を差し挟んだ。
「何故村瀬に出来て、お前には出来ないのだ?」
田村が首を左右に振り言った。
「分からない。遮断されてしまうんだ」
「誰に?」
「分からない…」
僕は悪戯っぽく一声笑い言った。
「インドに行って、アガティスの葉っぱを直接見ればいいじゃないか?」
田村が否定した。
「インドに旅立つ暇も金も俺達には無いだろう?」
僕は肩を落とし、答えた。
「そうだよな。俺達にはそんな金も無いし、暇も無いよな」
田村が調理されたアボカドを箸でつまみ、口に運んでもどかしそうな目付きをしながら咀嚼して飲み込み、告げる。
「とにかく身辺整理してから、事に当たらないとな」
僕は尋ねた。
「身辺整理とは?」
田村が僕を直線的に見詰めてから言った。
「インドではなく、異なる世界に旅立つのだから、家族に別れを告げるべきだろう?」
僕は恭しく頷き言った。
「それは成実ちゃんにも言ったのか?」
田村が答えた。
「勿論だ」