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瞑想世界28
その意気だと田村は言った。
びっこを引き出した田村に肩を貸しつつ、僕ら二人は苦行とも言える行進を続ける。
田村が言った。
「お前もしんどいだろうから、杖を作ろう」
「杖って、何で作るんだ?」
田村が指差した。
「あれでいい。あの枝の端切れを拾ってくれ」
僕は田村の腕から肩を離し、田村が指差した枝の端切れを拾い上げ、一度杖をつき強度を試してから、田村に手渡した。
田村がその杖をつき、会釈した。
「有り難う」
僕は涙が滲むのを堪え、田村に寄り添いながら喚いた。
「畜生、この迷路何故終わらないのだ。忌ま忌ましい!」
田村が苦しそうに苦笑いしてから言った。
「でも俺達は生還する事を諦めては駄目なんだ、絶対にな」
僕は頷き答えた。
「そうだな。諦めたら終わりだからな」
田村が喘ぎながら言った。
「俺達は命を拾いに来たんだ。捨てに来たのではないんだ。絶対にな」
僕は滲む涙を拭い言った。
「その通りだな。石にかじりついてでもこの迷路を突破しよう!」
田村が辛そうに息をつきつつ言った。
「その意気だ」




