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瞑想世界270
僕は涙を拭ってジャンプした。
吊橋の手前、僕の肉体は二つに分離した。
一人の僕が呆然と立ちすくむのを横目で見遣りなから、僕は吊橋の中央まで移動し、もう一度涙を拭った。
吊橋は風に煽られ、激しく揺れている。
僕はロープを両手で掴み、再びもう一人いる自分を見た。
するともう一人の自分が上空を見上げた後、崖っぷちからジャンプして赤いパラソルとなり、風に吹かれてそのパラソルが開き、舞い上がって紺碧の空に消えて行った。
それを目に止めて、僕は片手を離し、もう一度涙を拭い、小声で「母さん、母さん、母さん」と呟いた後、ロープを掴んでいる手を、涙を切るように手離した。




