瞑想世界27
僕らは成実ちゃんにたやすく殴り倒された。
紙切れが無くなっている。
と言うか、石ころが置いた石ころなのかどうかも見分けがつかなくなっていて、いつのまにか違う迷路に足を踏み入れ、そこを同じ迷路だと勘違いしていて、堂々巡りをしているのか、それさえも分からなくなっている。
深い迷路に入ってしまっているのかも判別出来ない迷路の懐深く、僕は言った。
「村瀬が紙切れを取り払ったのだろうか?」
しんどそうに田村が答える。
「分からない」
僕は辛そうな田村を労った。
「休むか?」
田村が拒む。
「いや、大丈夫だ。歩かなければ、いずれにしろ迷路は突破出来ないからな」
再び歩き出した僕らの背後で物音がした。
振り返った僕の網膜に成実ちゃんの姿が映った瞬間、成実ちゃんの正拳が僕の右頬を捉らえ、鈍痛に顔面を歪めながら、僕は吹き飛び倒れ込んだ。
成実ちゃんが、声を限りに金属音のような金切り声を上げ、そのままの勢いで田村に殴りかかり、田村もたった一発のパンチでいともたやすく殴り倒されてしまった。
僕も田村も倒れたままぐったりとしてしまい、起き上がる事も出来ない。
そこでもう一度成実ちゃんが雄叫びとも取れる金切り声を上げ、そのまま鬱蒼とした森に躊躇う事なく飛び込み、姿を消した。
倒れ込んだまま僕は田村に言った。
「大丈夫か、田村?」
田村がくぐもった声で答えた。
「ああ、何とかな」




