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瞑想世界265

喧々囂々たる理論を重ね、進化して行くしか無いと思いますと、成美ちゃんは言った。

田村が言った。





「そこまでの見方は期待感を寄せすぎだと思う。異相は力だけがものを言う世界だから、村瀬が例えばそのような計算をして俺達を誘ったとしても、村瀬の計算通りに事が運ぶ程甘い世界ではないと俺は思う」




僕は田村に同意した。




「俺もそう思う。哲学的な見地、法則から考えても、大宇宙に蔓延しているカオス、ロゴス、エロスの各カテゴリーは、人間存在の尺度で動いてはおらず、そこに意思があるにしても、人間存在から掛け離れたものであり、ましてや、俺達人間存在の美談的愛や友情に則り動くものではないと思う」





成美ちゃんが言った。




「でも村瀬さんにしても田村さんにしても、卓抜した瞑想者なのだから、そんな宇宙の法則にある程度は干渉出来るものと私は思いますが」





ここで僕はふと湧いた疑問符を持ち掛けた。





「ちょっと今思い付いた事なのだが、二人とも聞いて欲しい。俺は今、俺が住んでいた現実社会の中で、自分の実家に向かっているわけだ。そしてこの現実社会は俺が住んでいた現実社会と寸分違わず、全く同質のものと言えるわけだ。そして二人の話しを聞いていて、ここがカオスの坩堝だと言うのは分かったわけだが、俺が住んでいた現実社会も全く同質のカオスの坩堝ならば、俺はこの現実社会をアガティスの石ころを蹴り、自分が滅ぼした記憶は全く無いわけだ。ここに全く同じ現実があり、自分がいるのだから、そう思うのは仕方なく、だから二人の話しは信じたいのだが、俺がこの世界の母さんを殺したという話しは同質の世界にいる分、未だ半信半疑なんだ。そして母さんに会えばその気持ちは益々強まると認識出来るわけだ。勿論今現在語っているこの通信瞑想がまやかしだとか騙し絵だとは、直接的な攻撃性が無いので俺は信頼しているのだが」






田村がコメントした。





「俺も同じ気持ちだ。逆に言えば、俺達は未熟な存在だから、信じられるのはこの通信瞑想だけであり、愛や友情も村瀬を引っくるめた内輪だけの絆であり、異相を語る時はあくまでも人間存在としての可能性論の範疇を出ないのは自明の理だと思っているんだ」





成美ちゃんが続いた。




「私はそれでいいと思います。こんな理不尽で不条理が当たり前の異相世界に在っては、私達は可能性論だろうが、期待論だろうが、目測の誤り、勘が外れた等など、喧々囂々たる議論をして、進化を遂げて行くしかないと私は考えています」

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