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瞑想世界263
僕はアガティスの石ころについて成美ちゃんに尋ねた。
成美ちゃんが言った。
「自分の中に流れている朝鮮人の熱過ぎる血が朝鮮人差別を呼び込んでいるのだ。だからこそ必要以上に日本人に敵対意識と言うか恨みを抱き、逆差別するからこそ、益々朝鮮人に対する差別に拍車がかかるんだと、村瀬さんは言って、自分の中に流れている朝鮮人の血を殊更に忌み嫌っていましたね」
僕は言った。
「そんな苦悩が村瀬を狂わせていたのだな」
成美ちゃんが答えた。
「朝鮮人の血が俺を狂わせているのだ。それは俺を棄てた親と同じ血なんだと村瀬さんは言って、苦しんでいましたね」
田村が言った。
「村瀬は日本人に対する恨みよりも、自分の親に対する恨みが強かったのだろうな…」
成美ちゃんが答えた。
「それは絶対にあると思います。そして自分が親なき子で、朝鮮人である事に村瀬さんはひたすら病み自殺さえ考えていたと思うのです」
ここで僕は改まった口調で成美ちゃんに尋ねた。
「村瀬はアガティスの石ころについて成美ちゃんに何か言っていなかったかな?」




