瞑想世界260
それは永遠なるロマンだと、僕は言った。
僕は言った。
「それが成美ちゃんの永遠なる愛ならば、なんと哀しい永遠の愛なのだろうか」
成美ちゃんが言った。
「私は自分の恋に酔っている自分の為の恋なのです。だから村瀬さんの為に村瀬さんの愛を獲得する為のものではなく、永遠の片思い、自己満足でも、それは私の愛には変わりないわけです。だから客観的に見ればそれは悲しいだけの恋愛かもしれませんが、私には喜びだけがあるのです」
田村が言う。
「でもその自己満足の愛も、瞑想装置となる過程で忘却し、忘れ去ってしまうのが、宇宙の法則となるわけだ」
田村の意見に僕は反論した。
「でも恋する魂はカオスの坩堝で自我が崩壊しない限り、時間相が単一の世界でも、時間相が流れる世界でも、自分の恋をひたすら希求するその姿は、永遠の愛、永遠の心の美だと俺は思う」
成美ちゃんが言った。
「私の魂は太古の昔から村瀬さんの魂に恋をして、多次元宇宙を適わぬ恋であるのを承知で、村瀬さんを求めて永劫にさ迷っていたと感じるのです。次元の狭間の中で増殖した私は、やはり次元の狭間に存在し無数にいる村瀬さんに出会い、様々な思い出を紡いで来て、ここに至ったと思うのです。片思いを承知で村瀬さんを追い求める、その喜びが言わば私の存在証明となるわけです。だからそこには喜びしかないのです」
僕は言った。
「そんな成美ちゃんと類似した美しい心を持ち、永劫に適わぬ愛と承知しながらもひたすら追い求める魂の愛の旅人が、多次元宇宙には無数に存在していて、満ちているのだろうな。それは正にロマンだと俺は思うよ」




