26/270
瞑想世界26
動物の息吹が何も無い死の世界だと、田村は言った。
方向感覚が狂い、僕らは道に迷った。
同じ林道をぐるぐると回っている。
迷路だ。
重い身体を引きずるように歩きながら、僕は田村に尋ねた。
「目印になる灯台も見えないし、この迷路どうやって突破するのだ?!」
田村が座り込み息をついてから言った。
「何か目印になるようなものがあれば、それを各所ポイントに置いて、迷路を突破するしかあるまい。お前何か無いか?」
僕はポケットティッシュを出して、広告部分の紙切れを引きちぎり、林道の脇に置き、石ころを載せた。
「これを各ポイントに置けばいいだろう。しかし成実ちゃん、いないな」
田村がかったるそうに立ち上がり、言った。
「成実ちゃんどころでは無いだろう。この迷路を突破しないと、身体はどんどん重くなるし、おだぶつ間違いなしだ」
僕は引き攣るように一声笑い言った。
「その通りだな。俺は何だか頭も痛くなって来たし」
田村がしみじみと言った。
「この空間は、動物の細胞を劣化させて行く効果をもたらすのだろうな。生命の息吹が何も無い死の世界だ」




